まずは、読者の皆さん、ごめんなさい!
この原稿は、8月の頭に、香川さんから届いた原稿でした。
なので、ちょっとだけ、季節の感じがズレているかも……。
今回は、「怖い話」なのですが、
メールに気づかなかった、ということに、担当編集者は大いに震えたのでした……。

熟れたナス

 今年は午前中からもう暑い。広島の最高気温は38℃前後で40℃まではいかないものの、災害並みの暑さが続く。僕は夏フェスやお祭りのステージ以外はすべて屋内で唄っているし、平日は基本スタジオ内でのレコーディング作業ばかりなので、すっかりエアコン様にお世話になっているのだが、それはそれであまり身体には良くはないのだろう。毎日生ぬるい汗をかきながら、ギターを背負って項垂れている。7月の気温や豪雨は“30年に1度あるかないかの異常気象”だったそうだ。早くも秋が恋しいが、夏の旅はまだまだこれからである。夏バテに気を付けていかなければ。

 心配していた地元の花火大会は、豪雨災害や、台風の影響が予想以上に大きく、惜しくも今年は中止になってしまった。残念だけど仕方がないことだ。その分、別の想い出を作っていきたい。

 バテずにしっかり飯も食わなければ。と、あまり食欲もないくせにモリモリ食べてたら最近また体重が増え過ぎてしまった。そんなわけで僕は、憎き太陽が完全に沈んだ夜を見計らい、こそこそと運動靴を履いて、近所をランニングをするのだ。そして「疲れを残して仕事に支障が出たら大変だ!」とまたモリモリ食べる。結局、全然痩せない。しかし健康的!なんだか元気だ。とりあえず元気なので良いとしよう。

 こんなに暑いので、今回は涼しくなれるよう身の毛もよだつ怖い話でもしようと思う。

写真:iStock/korionov

 * * * * *

 沖縄は宮古島での話だ。旅の途中でたまたま知り合った家族の自宅にご招待してもらい、夕食をご馳走になった。宮古島の中心部から少しはずれたところのアパートで、オシャレで綺麗なマンション……とは言えないが、その代わりにサトウキビ畑や澄んだ星空に囲まれた、のどかな所だった。

「いらっしゃーい。入って入って~!」

 玄関で迎えてくれた夫婦はまだ若く、僕とそう変わらない年齢だ。まだあどけない可愛い子どもが2人いて、来年から小学校に通うお姉ちゃんが紡(つむぎ)ちゃんと、まだオムツがとれたばかりの弟、麦(ばく)くんと紹介された。二人とも田舎育ちの純粋無垢な子どもだ。

 食卓には、ゴーヤのサラダや、手作りの燻製ベーコンなど、美味しい料理がならんでいた。なんと、子ども達はやや癖のある『島らっきょう』が大好物だという。ボリボリと食べては僕にむかって「息くさくなったよ~!」なんて言いながら息を吹きかけてくる。他人に怖気づくこともなく、じゃれてくるのがたまらなく可愛い。僕は手土産にと、大きなアイスクリームBOX持って行ったのだが、食べきれないほどのアイスの塊を見て、バクの目が丸く輝いた。

「バク!たくさん食べたらお腹ピーピーになるからちょっとだよ!!」

 人目もはばからず声を荒げるお母さんの様子をみて、買っていったの、まずかったかな?と心配したが、バクはちゃんと言いつけを守り、大きな箱から少しだけアイスクリームをすくい、器に盛った。

 バクは、なぜかパンツを履いていない。下はまる出しで家の中(むしろ外も)ウロウロしているらしい。といっても、奔放でハチャメチャなキャラではなく、陽気で活発な姉のつむぎちゃんとは正反対の、内気で、口数もやや少ない男の子だ。こっそり僕のもとに近づいてきて、「遊ぼー」とそっと手を引く。LEGOブロックで家を作ったり、絵本を読んであげたりすると、嬉しそうに笑ってくれる。

 遊んでいたら、バクの様子が少し変わってきた。口数が更に減って、窓の外が気になるのか、抱っこして窓際に連れて行ってほしいという。

「どうしたの?外、見る?」

「うん。あれ、見て」

「何もないよ?ん?あれ、なんだろう。」

 よくよく目を凝らしてみると、遠くの電信柱の上の方がぼんやり青紫色に光っている。その光に集まるように、羽虫やカナブンが飛び回っていた。良く耳を凝らすと、何かがはじけるような、乾いた音が聞こえてくる。もしやラップ音というやつだろうか……。

「あれ。虫のやつー」

 ああ、あれか。

 最近見なくなったが、田舎の自販機とかに取り付けてある、ブラックライトで虫を集めて、電撃でバチバチ殺していく罠のやつ。久々に見た。島の人は、この広大な島の虫たちを、あの小さなブラックライトトラップで絶滅させようというのか。1万年かかっても無理そうだけど。

 バクは抱っこから降りると、母親のもとへ走って行った。

「お腹痛いの!?ほら!!言ったでしょう!バクはお腹壊してるんだから、アイスは少しだけだって!!」

 母親は声を荒げながらバクをトイレに連れていく。少しすると、

「こらー!!!おちんちんペロンしないとだめでしょ!!」

 という謎の掛け声が聞こえてきた?「???」となっていると、つむぎちゃんが

「あのね!“おちんちん”が“たま”に張り付いたままおしっこすると、おしっこが飛びちって汚いから、ペロンってはがしてから、おしっこしなさいってことなんだよ!」

 と親切に教えてくれた。なるほど。わからないでもない。バクよ、おちんちんペロンは多分大人の階段の1段目だ。

 無事、すっきりした顔のバクが下半身丸出しのままトイレから出てきた。お母さんは疲れた顔をしている。

 そしてお母さんは、ある“怖い話”を始めた。そして僕は、なぜバクがパンツを履かずに過ごしているのか、その理由を知ることになる――。

 母親いわく、少し前に、バクのちんちんにとてつもない“異変”が起こった。オムツの中にした排泄物(いやもう、うんちって書こうか!)が、前にまわり、ちんちんの先からばい菌が入って、恐ろしいほどに“ちんちんが腫れあがった”んだとか。母親はご丁寧に当時スマホで撮影した写真まで見せてくれた。それはもう“良く熟れたナス”の如く。バクのちんちんはどえらいことになっていた。その写真を送り付けられたバクの父親は

「仕事中にこれが届いたときは、怖くて、家に帰りたくなくなった……」そうだ。

 幸い、病院に行って1週間ほどで完治したらしいが、バクにとっても、それはそれは恐ろしい体験だったに違いない。僕もあの写真を思い出すたびに、寒気がするくらい恐ろしい。

 酷暑日が続くこの日本列島を涼しくするためにも、ここはバクにひと肌脱いで、むしろ一皮むけて頂こう。最後にその「バクナス」の写真を公開しようと思う。

 

 

 

 いや出来るわけねぇ!!

 また会おうね!バク、つむぎちゃん!!

 熱中症注意!!

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