◆人事部が悪い社員を社内調整=ブッ殺す!?◆シリーズ累計150万部「ニンジャスレイヤー」チームが描く衝撃の社内スパイアクションオフィスハック』待望の4thシーズン! 舞台は東京・丸の内の巨大企業T社。人事部特殊部隊「四七ソ」の香田と奥野に今日も新たな社内調整指令がくだる。不正を働くオフィス内のクソ野郎どもをスタイリッシュかつアッパーに撃ち殺せ。テイルゲート! ショルダーサーフ! 禁断のオフィスハック技の数々を正義のために行使せよ! 

 

◆18◆

 

「状況は概ね把握してる! 四七ソ、会議室へ集合!」

 室長がセキュリティドアを開けて帰ってきた。後ろには奥野さん。二人とも、調整用装備が入ったブリーフケースをいくつも携えていた。

「「ハイ!」」

 おれと高橋が急いだ。少し遅れて鉄輪が続く。

「どこだ、どこだ、あいつらのアジト……」

 鉄輪は敵が落としたAndoroid端末のチャットログを血眼で追っていた。画面には物凄い勢いでテキスト情報が流れている。

「香田さん、申し訳ありません。大変な時に不在で」

 奥野さんがおれの横に来て、並んで歩きながら、短く言った。

「いえ、奥野さんのせいじゃありませんよ。こんな襲撃を受けたのは、初めてです」

 そう言いながら、おれは声も表情も硬かった。

「あれエ?」

 後方、セキュリティドアを開けて、おれたちに呼びかける声が聞こえた。

「この時間、ミーティングなんてありましたっけ?

 ランチ帰りの後藤が、ブラジル体操をしながら悠々と歩いてきていた。

「お前がのんびり昼飯食べてる間に死にかけたんだよ! とっとと来い、バカ!」

 高橋が後藤のところへ行って背中を叩いた。

 おれたちの表情を見て、すぐに後藤は空気を読んだ。体育会系特有の嗅覚だ。

 今いる6人全員が会議室に集まると、ドアが閉じられ、緊急会議が開始された。

「よし、それじゃあ、いってみよう!」ホワイトボードマーカーを握りながら、室長が言った。「トップバッター香田選手、現場からの状況説明を!」

「ロジスティクスに偽装したならず者社員に、機密ダンボールを奪われました。間違いなく二三バイの残党です」

「なるほど。大麻工場調整の際に、煙に紛れて逃げおおせた奴らがいたということだな。実際、事務方による現場捜索でも発見されなかったから、御子柴がそいつらを率いている可能性が高い」

 室長がホワイトボードにキュキュキュと情報をまとめていく。こんなテキパキと動く室長を見るのは珍しい。それだけ事態が切迫しているのだ。

「はい、そのモチベーションは未だ不明ですが、奴らは死に物狂いです。一方で、極めて計画的でもありました。高橋、例のなりすまし電話のことを」

「奴らが来る前に、室長を名乗る内線電話があったんです。完全に騙されました」

「うん、来る時に内線ログを確認した。一本取られたね。最初の高橋が受けた内線は、間違いなく外部コンサルの仕業だろう。もともと電子合成されてる携帯ならともかく、T社アナログ内線をハックして、さらに俺そっくりに振舞ってみせたってことは、かなり強力な能力者だ」

 やはりそうか。おれたちが使う携帯電話の声というのは、実は本当の声ではなく、デジタルで最も近い波形が割り当てられている偽物の声だ。そこを突くオフィスハック能力も実際に存在する。

 だからおれたちは用心のため、日頃から可能な限り携帯ではなく内線を使ってきた。アナログ回線の声紋コピーは、携帯電話のデジタル声紋コピーに比べてはるかに難易度が高いし、オフィスハック能力の系統も違うからだ。

 だがT社内線をも欺くほどの能力者とは……間違いなく強敵だろう。

「加えて、監視カメラもやられています。これも詳しくは高橋」

ブルーノート・ブラインドが使われた形跡があり、第一人事部に調査申請中です」

「フーム。つまり、外部コンサルタントの関与が最低でも2名以上確認されているということか。相当な戦力だな。二三バイの所にコンサルが2人いて……。うん、こりゃ他にもいるな、絶対に。どこだ、どこが絡んでる……?」

 室長はホワイトボードに図を描きながら顎を撫でた。

「室長、あの機密ダンボールは一体なんだったんですか? あれと二三バイの間には、どういう関係があるんです? それがわかれば、奴らの狙いやアジトも……」

「うん、それは今は関係ないと見ている。二三バイの残党はたぶん、ただの捨て駒だ」

 室長がそっけなく言った。おれは肩透かしを食らったような気分だった。

「外部コンサルが絡んでるなら、一刻も早く手を打ちたいんだが……問題はまだ奴らの規模と拠点がなあ……」

「大丈夫です。敵のアジトと思しき場所、判明しました!」

 押し黙っていた鉄輪が、Android端末の画面を見せながら、満面の笑みで挙手した。

 そこには隠しオフィスの情報ログが表示されていた。

「西のサンサン渡り廊下の先です。前回のリレイアウトからもう4年以上使われていない無人フロアの寂れたオフィス。監視カメラどころか、空調も存在しない灼熱地獄。潜伏するのにこれ以上の場所はない。奴らはそこに機密段ボールを運び込みました。1時間以内に処理業者と接触し、あの段ボールを受け渡す手筈のようです」

 処理業者だって? もしかして敵は、初めからあの段ボールを社外に持ち出すのが目的だったのか? おれの中で何かが引っかかった。奥野さんがいつの間にか押収し、再生していたかもしれない資料を、敵が外部へ持ち出す……? 

 だがその考えをまとめる前に、室長が席を立った。

「よォし、でかした鉄輪! まだ間に合う! 動くぞ!」室長は防弾ブリーフケースを全員に配布した。「全員これを着用! 開けて驚くな!」

「え?」「驚くな?」「どういうことです、室長」

「まあ開けてみなって」

 おれたちはブリーフケースを受け取り、中身を確認した。

 その中に入っていたのは、いつもの分厚い防弾ウェストコートではなかった。

 黒く滑らかな、清涼感のある肌触り。これは……ワイシャツだ。

「室長、これって、もしかして」

「以前から僕らが希望していた……!」

「そう。第一人事部が社内調整部門用に特別試作させた、強化ケブラー繊維による防弾ワイシャツと防弾ブラウスだ。しかも冷感加工だぞ、クールビズ!」

「YES!」スリーピース装備に夏の間じゅう不満を漏らしていた後藤が、大声でガッツポーズを作り、立ち上がった。「あ、すみません」そして座った。

「室長、確かに凄いと思いますがこの色はどうにかならなかったんですか? 全員黒だと威圧感がすごいですよ」

 高橋は防弾ワイシャツを広げて肩に当て、サイズを確認しながら聞いた。

「ん? やっぱり黒はちょっと嫌だった?」

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