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阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし

2018.08.24 公開 ツイート

阿佐ヶ谷姉妹が小説執筆!「3月のハシビロコウ」(妹・木村美穂)第三回。 阿佐ヶ谷姉妹

この度、阿佐ヶ谷姉妹の初書籍『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』が発売となりました。「面白い」「癒される」「2人の関係が羨ましい」「文才がすごい」と多方面で話題になっています。そして、実は本書には「私の落とし方」をテーマにしたお二人の短編恋愛小説も掲載になっています。もちろん小説執筆は初の試み。実は、これがものすごく面白いんですよ…! 少しずつですが、まずは妹・美穂さんの小説からお楽しみください。

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 次の日のお昼近く。駅前の神社へ行く。大鳥居の端で失礼しますと一礼をして入り、手水舎で身を浄める。毎年姉と一緒に厄払いと芸道上達をお願いしている大事な神社だ。今日も日差しが暖かく、時折そよ風が吹いて心地好い。ベンチで3歳位の女の子とお母さんが、たべっ子どうぶつを食べながら休憩していた。神社の木々はどれも大きく、一際大きい夫婦欅がサワサワと優しく揺れている。
 
 前のおじいちゃんが終わるのを待って拝殿の前に立つ。お賽銭の100円玉を投げ入れ2拝2拍手。いつも阿佐ヶ谷姉妹を見守って下さりありがとうございます。姉が今浅草で公演をしているのですが、どうか1ヶ月体力がもちますように。私も健康に過ごせますように。世界が平和でありますように。よろしくお願い致します。1拝。

 気持ちもすっきりしたので、例のゼリー屋を探しに森へ行ってみる。背の高い木々に覆われた森の周りをぐるぐる歩いてみたが、一向に見つからない。
 姉め~拝んでやったのに、言ってた場所にないじゃないの! 姉を恨みだしたその時、森の茂みの奥から若そうな女子がこちらに歩いてきた。白い箱を持っている!

「すみません、この辺りにゼリー屋さんはありますか?」
「あぁ、わかりづらいんですけど、この奥の板塀の間を通って行くとありますよ」
「ありがとうございますっ」

 教えてもらった方へ向かってみる。道は石がゴロゴロしていて歩きづらかった。一般の人が通ってはいけないような細ーい板塀の通り道が確かにあった。下を見ると雑草が伸び放題で育ちすぎたタンポポの花がぶらぶら揺れている。本当にこの先? 疑いながらもその間を行ってみると、急に視界が開けて古いけれど素敵な古民家があったのだった。

 あった! 看板がないけれど、ガラス戸の中を覗くと確かにゼリーが売られていた。
 戸をガラガラと開けてみる。
「いらっしゃいませー!」
 高めの可愛い声にビクッとする。
 見ると白いコック服に、毛量が多いきのこ頭の男子が1人立っていた。やけに目がキラキラしている。この男子がゼリーを作っているのだろうか?
「こちらはゼリーバンバンさんですか?」
「そうです! ゼリーバンバンです!」
 彼が威勢の良い声で答える。

 玄関先を改造したのか、お店は4畳程のスペースにガラスのショーケースだけがあるシンプルな作りで、きのこ男子の背後にガラス戸がある。奥が厨房なのだろうか。ショーケースの中には十数種類のキラキラしたゼリーやババロア、ムースが夢のように並んでいた。美しい……。じっくり1つずつ眺めていくと、急に変な黄緑のゼリーがあった。

「ええっ?」
 思わず声が出てしまった。なんだか恥ずかしい。透明な容器に入っていて、底に真緑の藻みたいなのがあり、黄緑の中にタピオカなのだろうか、黒くて丸い物体がたくさん浮かんでいて、上にはカエルの足跡の形にクリームが飾られている。商品名「アマガエル」と書いてある。洒落が利いている……! ドクドクと興奮で心拍数が上がっていくのを感じる。私がアマガエルを見ているのを察したのか、
「アマガエルは緑茶のゼリーなんですよっ」
 と教えてくれた。

 迷いに迷ってアマガエルを含め8種類のゼリーに決め、包んでもらっている時に横の壁を見ると、アルバイト急募の貼り紙があった。時給900円・ゼリーが好きな方募集、と書いてある。

「アルバイトはまだ募集してるんですか?」
 と口に出してしまった。きのこ男子が一瞬固まって、
「あっアルバイト希望ですか!? ありがとうございます! 今店長がいないので、えっとじゃあ明日……11時に来てもらってもいいですかっ?」
「はい大丈夫です! ありがとうございます。よろしくお願いします」
 と言って、思わず名前と携帯番号を書いて置いてきたのだった。

※この続きはぜひ、『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』でお楽しみ下さい。

関連書籍

阿佐ヶ谷姉妹『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』

40代・独身・女芸人の同居生活はちょっとした 小競合いと人情味溢れるご近所づきあいが満 載。エアコンの設定温度や布団の陣地で揉め る一方、ご近所からの手作り餃子おすそわけ に舌鼓。白髪染めや運動不足等の加齢事情を 抱えつつもマイペースな日々が続くと思いき や――。地味な暮らしと不思議な家族愛漂う 往復エッセイ。「その後の姉妹」対談も収録。

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阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし

40代、独身、女芸人ふたりの地味おもしろい同居生活エッセイ。

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阿佐ヶ谷姉妹

ASH&Dコーポレーション所属
高い歌唱力で歌って踊れるピンクのドレスの二人組。
劇団東京乾電池研究所にて知り合い、以来親交を深める。
本当の姉妹ではないけれど、顔が似ているということでコンビを組むことに。
2016年フジテレビ「とんねるずのみなさんのおかげでした」『第22回細かすぎて伝わらない モノマネ選手権』優勝。現在、数々のバラエティ番組で活躍中。

渡辺 江里子(わたなべ えりこ・写真右)
1972年7月15日生 栃木県出身 特技:ハモり 趣味:カラオケ

木村 美穂(きむら みほ・写真左)
1973年11月15日生 神奈川県出身 特技:ゼリー作り 趣味:仏像鑑賞

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