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 小室圭氏は、私の好物のひとつである。至學館の谷岡郁子学長の精神構造も興味深いが、小室氏も観察対象として放っておくことができない。この度、アメリカへご留学されるということだから、今回は、小室氏について考えてみたい。

1  シンデレラ願望の男

 2010年に湘南江の島の観光協会主催のコンテストで「海の王子」に選ばれたという小室氏だが、私の中では王子というよりシンデレラに位置づけるほうが、むしろピンとくる。

 シンデレラというのは、どこか不満げな少女である。裕福な父、優しい母のもとで過ごした幸せな時代は束の間、病弱な母が亡くなって、その後釜に座ったのは、連れ子2人を贔屓する意地悪な継母だった。

 年がら年中、継母と2人の姉に召使のように扱き使われて、美しく装って舞踏会に出かけるなんて贅沢はおろか、年頃の女の子らしい楽しみのすべてを奪われてしまったのだ。

 もちろん、シンデレラは気立てのいい少女として描かれている。表立って不満を現したわけではなかろうが、彼女は心の中でこう思い続けていたに違いない。

「こんな生活、私にはふさわしくないわ」

 本来の自分に不釣り合いな環境に置かれた私――この暗示は小室氏につながる。

 新聞・週刊誌報道等によると、若くに父を亡くして決して余裕があったわけではなかろうに、地元の公立中学校に進学することなく、日本の中の異国のようなインターナショナルスクールに通う。

 成人式には、母の婚約者に買ってもらったという5万円の高級な靴を履いて、帝国ホテルの写真館でポージングを決める「週刊現代」2018年3月10日号

 地元の中学なんて僕には不釣り合い、近所の写真館なんて僕には相応しくない……そこにあるのは「本当の自分」はそんなものではないという巨大な自己愛であろう。

 就職後の元同僚の証言も秀逸である(「週刊女性」2017年11月14日号)。卒業後は三菱東京UFJ銀行で丸の内支社法人営業の部署に配属されたという。邦銀の法人営業部と言えば、これは文句なしの超エリートな滑り出しである。ICUはいい学校だが、他の名門校出身者もひしめくことを考えると、小室氏の圧倒的な英語力のほか、面接でのウケが非常にいいのではないかと推測される。実際、銀行業務時代の元同僚は、小室氏の朝礼での挨拶を「大きくはきはきした声で笑顔もキラキラ」とべた褒めしている。

 しかし、彼はここで挫折する。

 コミュニケーション能力が高くて、面接での覚えがめでたいにもかかわらず、仕事ができない人というのは、ときたま存在する。小室氏が、そうだったっていうつもりはないけどね。(いや、あるけどね。) だが、元同僚の証言によると、上司は小室氏の英語能力は認めながらも、業務のほうは「あんまり…」と口を濁していたという。もちろん、英語能力の高さが嫉妬を買ったっていう可能性は十分あるのだが。(と、一応フォロー。)

 さらに、元同僚は証言を続ける。小室氏は、会社を訪問する際に事前に地図を用意して運転手さんと相談することもなかったという。

 くだらないことかもしれないが、日本企業ではこういうのが極めて大事なのだ。クライアントを訪問する際に、新人は、あらかじめ地図を用意して運転手さんに事細かに相談する。「皇居周辺は信号につかまっちゃうと時間が読めないから、5分早めに出ましょうか」みたいなね。そのうえで、上司の肩書の順番に一番上の人を運転席の後ろの「最上座」に、次の位の人を助手席の後ろの「上座」に誘導し、自分が助手席という「下座」に座ったうえで出発進行。

 日本企業の中の日本企業である邦銀ではこれが定石。逆に、いかに小さく見えても、これができないと仕事ができないと言われてしまう。

 弁護士時代には、邦銀の相手方にメールを送るたびに、ccの宛先を肩書き順に厳密に並び直したものである。これが非常に時間がかかる。リテール業務部の室長と法人営業部のマネージャーはどっちが偉いのよ?みたいな。でも、相手から送られてくるメールのccでは、私たち弁護士が必ず年次順に並べられていた。実験として、一度、こちらから送付するメールのccで、弁護士の年次をランダムに並べ替えて送ってみたけど、返信はやっぱり年次順に直されてたもんね。気にしてらっしゃるんですね。

 こういう世界でインターナショナルスクール出が力を発揮するのはかなり難しかったのだろう。想像に難くない。

2 他力本願の男

 もちろん、小室氏には圧倒的な長所がある。シンデレラであるがゆえの自己肯定感の強さである。

 あるとき、小室氏が担当する会社の重要書類が紛失するという一大事件が起きた「週刊女性」2017年11月14日号)。1円でも合わないと帰れない銀行文化において、これは深刻すぎる事態だ。それでも、「僕は〇〇さんに渡しました」と冷静に主張する小室氏。〇〇さんという女性行員がパニックで大泣きしているにもかかわらずである。

 こういうときに普通の神経の人なら、自分は絶対に書類を渡しただろうと思っても、焦って真っ青になる。さらに、頭が回る人なら、「外出前にばたばたとまとめて○○さんに渡して、混乱させてしまった僕の責任」と、さりげなく人に責任を押し付けつつ、殊勝に振舞ってみせる。

 そんな嫌な奴になることなく、「我関せず」の態度を取った小室氏は、生まれながらにやんごとないか、メンタルが半端なく強いかのどちらかで、彼の場合は後者だった。

 思うに、彼の自己肯定感の源は、母の暗示にあるのではないか。

 一人息子を溺愛したとされる母の佳代氏は、幼いころから「あなたは特別」というメッセージを陰に陽に小室氏に伝え続けたのだろう。その母の強い強い願いが暗示となり、「これは僕の仮の姿」という小室氏のシンデレラ願望を生んだ。ここでない場所にいるべき自分を信じるその自己暗示は、眞子様との婚約という人生の大激変を引き寄せた。

 自らを評価しない(←ってことにしちゃったけど、だいじょうぶ?)銀行内で、誰ともつるまない小室氏は、一人でランチを済ませ、トイレの姿見で髪型を整えながら、こうつぶやいていたに違いない。

「誰も本当の僕を知らない。今に驚くぞ」

 ロイヤルファミリーと付き合っているというその事実が、彼のプライドの最大の拠り所だったのだろう。

 結局、結婚準備のためか、それともその他の理由があったのか、超一流銀行をあっさりと辞めてしまった小室氏は、一橋大学大学院国際企業戦略研究科に通いながら、法律事務所でパラリーガルとして働く。目指すのは「国際弁護士」だという。

 目指すものとやってることがどこかしっくりこない。なぜ、「国際」弁護士なのだろう。もし弁護士として国際的な取引にアドバイスしたいなら、ものすごい疲れる試験だったけど、日本の弁護士資格の挑戦するのがストレートのように思う。そこから、海外留学してもいいだろうし。

 なんなのだろう。この「日本で勝負しない」感? そして「フィールドは世界」的な? 日本の銀行内で挫折したっていう視座を見事に切り替えるために、「ここは僕みたいな国際人の活躍すべき場所じゃないから」ってことにしたのではないか。こうやって地道な努力ではなく、目先を変えることで挫折をなかったことにするのはいいことではない。クセになっちゃうし。

 ところが、小室氏はロースクールに合格してこの夏に渡米するという。少し見直した。応援したい。

 私がシンデレラを肯定的に評価できないのは、他力本願っぽいからだ。「ここは私にはふさわしくない」と信じ込みながら、努力の蓄積で日常を少しずつ変えるのではなく、王子様が私の手を取って宮廷に導いてくれると夢想するなんて、超がつくような美人にだって許されないレベルのあほくささだと思う。

 だが、ここで、ママの暗示と自己肯定によって運を引き寄せてきたシンデレラボーイは、自らの足で一歩を踏み出そうとしている。根拠なき自信を、確かな実力に変えてくれるだろう。

 ***

 と、勝手な応援メッセージで、私はこの文章を締めくくるつもりでいた。

 ところが、小室氏が通うというフォーダム大のロースクールからありえない公表を目にする。なんと、小室氏は「超特例措置」を受けている。普通ならば、LSATというセンター試験のような難しい試験を受けて、J. D.という3年間のコースに入る。本国のロースクールを卒業している外国人などは、これをスキップして1年間のLL.M.コースに進む。ところが、法学部すら卒業していない小室氏は、なぜかLL.M.コースに入って、そこからJ.D.コースへの編入を目指すという。たとえていうなら、試験の点数が足りなくても小論文だけで大学に受かっちゃうみたいな感じではないか。

 こうなると、彼が受けると言われる授業料全額免除の奨学金だって、徹底的にきな臭く見えてくる。「学問その他の資質」が考慮されたということだが、試験を受けていないか、点数が足りなかった可能性もあるところからすれば「その他の資質」によって学費の全額免除を受けるのだろう。もちろん、大学の成績がとってもいいとかいろいろな可能性があるけど、「日本のプリンセスの婚約者が今般我が大学に入学します」とわざわざ公表しちゃってるところからすると、フォーダムが最も評価したのはロイヤルファミリーとの関連性だろう。大学の宣伝にもなるしね。

 ちなみに、フォーダムは、日本でいうところのMARCH(明治、青学、立教、中央、法政)的なイメージの学校だと思うんだけど、ロイヤルファミリーと婚約してるからって、試験も学費も特別扱いでMARCHに行けるなんて不公平、信じられます?

 さて、2つのストーリーが浮かんでくる。ひとつは、小室氏が、プリンセスの婚約者としての自分の価値を、小論文でものすごくうまくアピールした可能性。(←さっすが、無敵の面接合格者!!)もうひとつとは、2人を引き離すことで冷却を狙う「大人」たちが大学側になんらか働きかけた可能性。

 もうどちらでもいいと思う。どうやら、彼のシンデレラパワーは、当初の私の想定を超えているようだ。眞子様との婚約を引き寄せたばかりか、プリンセスの婚約者という地位を最大限に利用してアメリカのロースクールに特別扱いで通えるというタナボタ。破壊力抜群の他力本願ボーイに自分の力で一歩踏み出してほしいなんて、庶民のいじましい願いはもうやめよう。彼にはこのまま突っ走ってほしい。

 二人の仲を引き裂こうという大人たちの陰謀など、持ち前の溢れんばかりの自己肯定と、そして確かな実力ならぬ他力本願力で、きらっきらに打ち砕いてほしい。

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