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広く弱くつながって生きる

2018.07.07 公開 ツイート

第三回

アラサー世代が恋愛・結婚に求めるものとは? 阿部珠恵/佐々木俊尚

佐々木俊尚さんと阿部珠恵さんが、『新しい「人間関係」入門 ~結婚も仕事も、もっとゆるくていい?~』と題したトークイベントで、これからの新しい「人間関係」を切り口とした結婚や仕事、共同体の在り方について語りました。
構成:新井大貴(箕輪編集室)

アラサー世代が恋愛・結婚に求めるものとは?

佐々木 たまちゃんはSNSで結婚相手を募集してプレゼン大会をしたよね。

阿部 シェアハウスに住んでくれるという価値観を共にできるような男性を募集したんです。そしたら25人から連絡が来たんですよ。その中で「シェアハウスに住みながら子育てがしたいと僕もずっと思っていました」って言ってくれた人を選びました。

佐々木 僕はこれはハッピーエンドになるかと思ってすごく期待して、結婚式に呼ばれるかなと思っていたら、なんと驚くことに別れちゃったんだよね。

阿部 でも、付き合って半年くらいはシェアハウスの5畳くらいの部屋で一緒に暮らしてたんですが、喧嘩とかも一切なくて。

佐々木 相性がよかったんじゃないですか。

阿部 と、私は思ったんですけど(笑)。向こうはなんかもうちょっとやっぱり恋愛したいみたいな。私は30歳になるぐらいから、一緒に住む人とか、一生一緒に結婚して暮らしていく人がすごい大恋愛に落ちた人じゃなくていいなと思うようになっていて。

佐々木 なるほどね。前に、「お見合いと恋愛、どっちがいい?」というのをツイッターで議論したことがあって。誰かが言っていたのを聞いて、そうだなと思ったんだけど、恋愛結婚ってだいたい結婚をゴールに考える人が多い。もうすごい好きだから一緒に暮らしたい。結婚して、やった! ゴールだ! という。
 お見合いってそもそも下手すると一回ぐらいしか会ってなかったりするわけだから、結婚がスタート地点。仲良くなるのがどこかのゴールにあるというね。その結婚についてのスタートとは何か、ゴールとは何かが全然違う。
 恋愛結婚でゴールすると、その先は単なる余生なわけですよ。情熱、いわゆる恋愛感情は3年で終わり説みたいなのがあるわけで。だんだん情熱も薄れていくから、惰性になっていく。逆にお見合いのほうが、まったく知らないところから始まると、「実はこんな素敵な人だったんだ」ってだんだん気付いたりとかね。それで、しみじみと情が深まっていくという。中にはこんな酷い男だったのかというのもあると思うんだけど。
 でもお見合いの場合はそれもそれで、この人を選んだのは私じゃないしという逃げ道がある。恋愛の場合は純粋に自分が選んだわけだから、結婚してハズレだったとしたら、選んだお前が悪いだろうと言われちゃうわけで。そうすると、意外にお見合いのほうが理にかなっているんじゃないかなってその感じはちょっとするよね。だから恋愛と結婚と実は別物なんじゃないかという。

阿部 私もそうなんですよね、30歳ぐらいになってくると。人生100年時代に言うのもあれですけど(笑)。

佐々木 そうするとさっきの25歳の彼は恋愛がしたい。でも、たまちゃんはその彼と大恋愛をしてから結婚しようとは別に思ってなかったというか。

阿部 そうですね。

佐々木 今すぐ結婚できればいい、ぐらいの感じだったということですか?

阿部 今すぐ結婚できればいいと言われるとちょっと語弊があるんですけど。たまたま選んだその25分の1の人と5畳ぐらいで一緒に暮らせるって結構すごいことだと思っていて。例えば70歳ぐらいまで一緒にいるとなったら、いろいろなことがあるじゃないですか。そのときに、これぐらい穏やかな気持ちで、常に問題について話し合えたら、それは一番いいかもしれないと思ったという。

佐々木 うーん。結局それは結婚に何を求めるかという話だよ。うちは妻がイラストレーターをフリーでやっているから、よく夫婦取材を受ける。そこでだいたい来るのが女性ライター。なぜか男のライターは夫婦取材には来ないというね。女性のライターが来て、開口一番必ず聞くのが、「お二人はどんなに愛し合っているんですか」と。僕はね、思わず「別に愛し合ってないですけど」とか答えると、途端にシラーっとした顔になって話が続かなくなるというパターン。
 
 別に結婚に恋愛感情はいらないよね。入口としてはあったかもしれないけど、持続した生活をするために必要なのは、経済的な安定や、例えば部屋が散らかっているほうがいいか、片付いているほうがいいかとかいう生活感覚。逆に、好きな音楽や映画の好みが合わなくたって、別に一緒に聴きに行ったり、観に行かなきゃ済むよねと。恋愛の場合はやっぱり同じ映画を観に行ってワッと盛り上がるという、この触媒的なものが必要じゃない。でも結婚にはその触媒はもはや必要ないので、そこの感覚の違いってすごくあると思う。

恋愛に求めるものが代替しやすい時代

佐々木 最近つくづく思うんだけど、あまりみんな恋愛を欲しなくなってきている。

阿部 ああ、彼氏がいない20代が何割みたいな話とかもありますよね。

佐々木 うん。世の中全体にそうなんじゃないかなという。

阿部 特に私は、多分シェアハウスを始めてからそれが顕著で。シェアハウスを始めたら、世界が広がったという。それこそ佐々木さんが書いてらっしゃったみたいな、広く弱いつながりみたいなのがシェアハウスを通じてできていくんですよね。友だちが友だちを呼んできたりとか。そうすると必ず彼氏と映画を観に行かなくていいじゃんみたいになる。

佐々木 そうだよね。

阿部 彼氏と映画の好みが合わないこともあるじゃないですか。そしたらこの映画はあの人と一緒に観に行ったほうが絶対面白いとか。

佐々木 音楽とかそうだよね。そう考えたら自分の中に、飲み友達や映画友達、音楽友達、あるいは散歩友達といったいろいろな友達がいて、それぞれに付き合うほうが楽しい。そのトータルである種自分のつながり欲求というか、恋愛欲求の代替物みたいになっていくというのはひょっとしたらありなのかもしれないな。

阿部 ありなのかもしれないですよね。というか、昔に比べて娯楽もすごく増えてきてるじゃないですか。だから、恋愛に求めていた刺激みたいなものが満たされてしまっているという。

佐々木 なるほど。まあ、そうかもしれないね。じゃあ、もう恋愛しないの?

阿部 いやあ、すっごい好きな人できたらちょっと違うこと言ってるかもしれないから、なんとも言えない(笑)。

佐々木 アハハハ。すごく好きになるのかどうかというのがあるよね。

阿部 そうですね。だから逆に、好きになったらすごいと思うんですよ。こんなに楽しいことが世の中にいっぱいあるのに。

佐々木 それでも好きになる。

阿部 うん。それで好きになったらすごいと思うんですけど。でもその人と70歳まで一緒にいることが人生においてベストかというと、また違う話だと思いますね。

佐々木 たまちゃんぐらいの世代の女性と話すと、みんなすごい結婚のことを言う。結婚したいんですとか。でも必ず僕は、「いや、結婚したって別に人生100%完了しないよ」みたいなことを言うんだよね。そうするとみんなシラーッとした顔をして、なんでそういうドライなこと言うんですかと怒る。

阿部 そうなんですよね。私も結婚に夢があるというよりも、単純に「女性は早めに産んどいたほうがいいよ」みたいな子育ての体力的な意味で、一定の限界があると思い始めたというか。もし60歳ぐらいでも産めます育てられますとなると、別に今しなくてもいいかなと(笑)。

佐々木 いや、なんかね、30代って女性にとって…いや、男性もそうなんだけど仕事が重要な年代。だからその時期に一旦ラインから外れるというのはやっぱり大変だよね。

阿部 そうですね。ある意味子供を産めるか産めないかのギリギリの年代まで、あんまり考えてこなかったというのもあるとは思うんですよね。

佐々木 フランスみたいにシングルマザーでも社会がちゃんとサポートしてくれて、気にせず子育てできるとう方向に日本社会が舵を切り替えれば、ちょっと状況は変わってくるとは思うんだけどね。

(つづく)

 

書籍紹介

佐々木俊尚『広く弱くつながって生きる』

新聞記者時代、著者の人間関係は深く、狭く、強かった。しかしフリーになり、リーマンショックと東日本大震災を経験して人とのつながり方を「浅く、広く、弱く」に変えた。その結果、組織特有の面倒臭さから解放され、世代を超えた面白い人たちと出会って世界が広がり、妻との関係も良好、小さいけど沢山の仕事が舞い込んできた。困難があっても「きっと誰かが少しだけでも助けてくれる」という安心感も手に入った。働き方や暮らし方が多様化した今、人間関係の悩みで消耗するのは勿体無い! 誰でも簡単に実践できる、人づきあいと単調な日々を好転させる方法。

阿部珠恵,茂原奈央美『結婚してもシェアハウス! 〜普通の婚活は、もうやめた〜』

現在、男女10人(夫婦2組含む)シェアハウスで暮らしている、アラサー独女のアベタマエ。シェアハウス生活を満喫しすぎて「もう結婚しなくてもいいのでは?」という持論をブログで展開したところ、Yahoo!ニュースのコメント欄で炎上。なので、ネットで結婚相手を募集してみました。条件は「結婚した後も、シェアハウスに一緒に住んでくれる人。そして子どもが産まれても、シェアハウスで一緒に育ててくれる人」。炎上した記事のおかげで(個性的な)ムコ殿候補がざっくざく。書類審査→グループディスカッション→1dayインターンシップを経て、ついに候補者から一人に絞る。そこからシェアハウス6畳一間の同棲生活がスタート。果たして、ネットで募集して数回しか会ったことのない男性と、結婚できるのか?!?! 幸せになりたいアラサー独女の、七転八倒の婚活記録。

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阿部珠恵

1985年、山口県下関市生まれ。東京都立大学人文学部社会学科卒業。 都心で働く楽しさを感じる一方で、地方出身者が都会で暮らす大変さを痛感し、会社の同期とシェアハウスを開始する。世の中の「暮らし方の常識」に疑問を抱き、都会でより楽しく生きるためのコミュニティの在り方を模索し始める。現在、家族が何組も住めて、一緒に子育てもできる、新しい形のシェアハウスを作るべく奮闘中。 著書に『シェアハウス わたしたちが他人と住む理由』(2012年、辰巳出版)。

佐々木俊尚 作家・ジャーナリスト

新聞記者時代、著者の人間関係は深く、狭く、強かった。しかしフリーになり、リーマンショックと東日本大震災を経験して人とのつながり方を「浅く、広く、弱く」に変えた。その結果、組織特有の面倒臭さから解放され、世代を超えた面白い人たちと出会って世界が広がり、妻との関係も良好、小さいけど沢山の仕事が舞い込んできた。困難があっても「きっと誰かが少しだけでも助けてくれる」という安心感も手に入った。働き方や暮らし方が多様化した今、人間関係の悩みで消耗するのは勿体無い! 誰でも簡単に実践できる、人づきあいと単調な日々を好転させる方法。

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