体調管理が難しい蒸し暑い季節にぴったりの新刊『おいしい&ヘルシー!はじめてのスパイスブック』では、心も身体も元気になるスパイス生活について紹介しています。

インドや周辺諸国の人々にとってスパイスが健康に役立つということは常識で、その日の気候や体調に応じてスパイスを使い分けています。日常には「グッド・フォー・ヘルス」が溢れているんです。

本書より、スパイスの知られざる魅力と手軽な取り入れ方を抜粋してお伝えします。

常備したいスパイス:マスタード

◎主な使い方
南アジアでは最初に油と共に熱し、弾かせてから料理を始める。一方で油と共に熱したものを料理にかけるなどして仕上げに使うことも多い。主にインド南部やスリランカなどで多用するが、インド北部やネパールでもクミンやフェヌグリークなどと合わせて使うことがたまにある。

◎味
油で熱すると香ばしくなる。パウダーを水で練ると辛さが増す。

◎主な効果
「風邪に効くし、身体を丈夫にする」とインド人たちは言う。抗酸化物質。打ち身などの湿布にも。ただし大量摂取は肝臓に悪影響という説もある。

◎常備量
30g以上。密閉容器で暗所に保管。

◎特長
イエローはマイルドな辛み、ブラウンやブラックは刺激の強い辛み。

◎その他
いくつもの種類があり、イエロー、ブラウン、ブラックに大別される。南アジア料理では主にブラウンを使用。

◎主な産地
ヨーロッパ、アジア一帯。

料理では防腐剤として、塗ると解毒剤やデトックス、温湿布に

 日本ではおでんなどにつける練り芥か ら子しがお馴染みだ。マスタードパウダーを水またはぬるま湯で練ると辛くなる。これはマスタードが持つ配糖体シニグリンが、水と合わさると酵素ミロシナーゼの働きで芥子油に変化することが理由だ。つまりわさびと同じ辛みである。辛みの強さはブラック、ブラウン、ホワイト(イエロー)の順。が、スターター(料理の最初に油と共に熱すること)やテンパリング(料理の仕上げに熱したスパイスと油を加えること)すると辛みはなくなり、プチプチとした歯応えと香りが残る。

 効能としては防腐作用、消化促進作用が期待される。パウダーは水や油と合わせ塗布薬とし、肺炎や気管支炎、神経痛、腰痛などに効果があるとか。

 マスタードはアブラナ科で文字通り油分が豊富。特にインド北部ではマスタードオイルを料理、またスキンオイルとして両面で多用しているようだ。

 ネパールのプジャ・バスナートさん(*7)のお宅へお邪魔した。彼女は3人の子供の母親。ネパール人やインド人はマスタードオイルを塗って大人になるという。生後半年ほどの赤ちゃんをタオルの上に寝かせ、片手にオイルが入ったボウルを持ち、どばどばと背中やお尻にかけ、一気に塗り込んだかと思うと今度は仰向けに返し、またどばどば。すかさず手のひらで頭から足の先までのばしマッサージするように塗り込んでいく。夜の薄暗い裸電球一つの部屋なので、赤ちゃんの白目と茶褐色の肌がぴかぴかと反射しているのが印象的だった。オイルはそのときの体調に応じて他のスパイスを加えることもあるという。

 このマッサージを赤ちゃんの間は毎日朝夜2回ずつ行い、3歳頃から1日1回、6歳頃には週に1回程度と徐々に減らしていく。一度塗ったら拭き取らずに、朝から外に放りっぱなしなのだそうだ。太陽に晒されることで汗が噴き出し、もし虫に刺されても毒を中和し、怪我や風邪に負けない丈夫な身体になるという。

 東インド出身のアリムルさんは子供の頃、寒い季節にマスタードオイルを全身に塗り、川や湖で遊んでいたという。冷たい水の中でも身体が冷えることがないそうだ。インドやネパールの子供たちのパワーの源はマスタードにあった。

さやからこぼれ落ちたばかりのブラウンマスタードシード

インド人の問屋から仕入れたシードとパウダー

*7 プジャ・バスナートさん(ネパール・カトマンズ在住。3人の小さな子供を持つ若い主婦)

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カワムラケンジ『おいしい&ヘルシー! はじめてのスパイスブック』

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