体調管理が難しい蒸し暑い季節にぴったりの新刊『おいしい&ヘルシー!はじめてのスパイスブック』では、心も身体も元気になるスパイス生活について紹介しています。

インドや周辺諸国の人々にとってスパイスが健康に役立つということは常識で、その日の気候や体調に応じてスパイスを使い分けています。日常に「グッド・フォー・ヘルス」が溢れているんです。

本書より、スパイスの知られざる魅力と手軽な取り入れ方を抜粋してお伝えします。

スパイス料理をすすめる理由

 ここでいうスパイス料理とは、よくイメージされる「激辛料理」とは違う。もちろん、それも魅力の一つだが、インドやネパールのプライベートの食事、あるいは家庭料理を指している。

 それは、ひと言で言うならば、「やさしい」料理なのだ。

 意外に思われるかもしれないが、日本でもそうであるように、家庭で作られる食事は、舌にも胃にもやさしい。これはスパイス料理の本場でも同じこと。あちらでは台所は女の城。奥さんやお母さんが、家族の身体を思って、塩や油、素材の質や量を考慮してくれているのだ。例えば男たちがたまに強い刺激や味の濃厚なものを求めて外食することはあっても、彼らはまたすぐに家に帰りたがる。家の料理が最も身体にやさしいことをよく知っているからだ。

 また、大そうな什器や道具を必要としないので、お財布にもやさしい。フライパンと蓋つきの鍋とスプーンがあれば、だいたいの調理から食事まで一通り可能だ。もちろん家庭的な料理といえども、日本ではなかなか入手しにくい特殊な什器も存在する。だが、ないならないでなんとかなってしまうところもまた、インドやネパールなどに見るスパイス料理の懐の広さなのだ。

 さらに、心にもやさしい。見慣れぬたくさんの種類のスパイスがあり、すべて色や香り、食感も違う。日本に入ってきている食用のスパイスは優に100種類以上にのぼる。素材選びから始まり、切り盛り、さらにスパイスはホールとパウダーで使うタイミングが違ったりと何かと手が焼ける。しかし、時間と共に匂いや色が変化していき、出来上がったときの達成感はもちろん、食べたときの感動はひとしお。気がつけば頭の中から仕事のストレスなどは吹っ飛んでいるはずだ。

 いちばん嬉しいのは、健康に役立ってくれることだ。すべてがスパイスで治療できるとは思わないが、少なくとも予防や体調維持、疲労回復には役立つことを体験的に確信している。少々の風邪や胃腸の不調などはまず治る。多くのスパイスがインドの伝統医学アーユルヴェーダや中国で生まれた漢方医学で多用されている。ただ、何事も極端はご法度。スパイスもクスリなわけだから、副作用も大いにありえる。

 それをなくすためにも、大事なのはやはりバランスだ。料理には、複数の種類のスパイスを使い、さらに野菜や肉、魚などの素材、また加熱や流水といった動的作業も加わる。その目的はすべて、バランスをとるためである。薬効や栄養はもちろん、食べやすい形や硬さに、味を調えるための作業。偏らないことがスパイス料理でもあるのだ。

 いかにしてインドやネパールなどスパイス文化圏に続く伝統を、遠く離れた日本の我々が役立てることができるのか、というところが本書のポイントである。はじめてスパイスに触れる人でも楽しめるようできるだけ簡単なものを集めてはいるが、中には1時間以上かかるものもあるので、ぜひ休日にでも試していただきたい。

スパイスを使うと身体が変わる

 身体の変化はいくつもあるが、まず僕個人のスパイス食のありようを話すと、特に20代の後半あたりからインドの家庭で作られるようなやさしいスパイス料理を食べはじめ、30代前半くらいで、毎日のように食べるようになった。が、30代後半からスパイス料理と現代日本のなんでもありの食の間を行き来するようになり、40代前半、カミさんの病気以降は再びほぼ毎日である。

 この暮らしの中でまず言える大きな変化は、お通じがよくなることだ。スパイス料理を習慣にしていると、便秘になりにくいだけでなく、便の状態や匂いもよくなる。もちろん食べる内容にもよるわけだが、僕の料理の特徴としては豆と野菜が主体で、そこにヨーグルト、漬物、おかず的なものが加わる。また、自分のために作る料理は、なぜだか肉や魚介、ニンニクを積極的に使わなくなっている。ただ、仕事柄、外食は人一倍多く、そのたびに特殊な素材や濃厚な調味料、旨みを摂取している。そのような食事をすると、また自分の料理を食べておかなきゃという感じになるのだ。

 次の変化は、寝込むようなことがなくなったこと。むろん、これは食べ物だけが理由とは断言できないが、とにかくスパイスと触れる密度が急増した30代前半頃からの現象である。それでも風邪は引くが、以前のように酷くはならない。喉が痛くなったり、身体が火照てったり、逆に冷えたり、そんな症状が出るとすぐにスパイスで対処しているからだと思う。

 もうひとつ。少しの素材で満足できることが増えた。僕の料理は下手をすると素材が豆とタマネギだけってこともある。一時期、日本では30種類の素材を食べなきゃ健康になれないといわんばかりのムードがあったが、まったく逆行している。言い換えれば、それほどスパイスはいろんな刺激を与えてくれるということでもある。辛さはもちろん、甘さや酸っぱさ、時に心地いい苦みもある。また色や香り、味、食感などにも大きな影響をもたらす。スパイスは画材や楽器のようなもので、まったく同じレシピで料理をしてもその時々で奏でる音の質が微妙に変わる。それがわかってくると、これまた面白くてしょうがない。

 さらに、緊急事態にもスパイスは役立つ。例えば、激しい腹痛に襲われたとき、歯が痛くなって眠れないとき、身体の緊張を解き放ちたいとき、また擦り傷や切り傷を負ったときなど、意外なほど助けてくれるのだ。

 スパイスは確かに薬効を持っている。そしてスパイスは日常の調味料の感覚で活躍させることができる。こんな都合のいいものは他にないのではないか。

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カワムラケンジ『おいしい&ヘルシー! はじめてのスパイスブック』

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