以前、TVでケミストリーの川畑要氏が「年をとって顔の肉がそげて、耳にぶらさげたグラサンが落ちるようになった」と話していた。
また「かといって小さめのグラサンをぶらさげると、こめかみが痛くて耐えられない」とも。

それを聞いて「この人はグラサンと真摯に向き合ってきたんだな」と感銘を受けた。そして「グラサンぶらさげてるダセえ人」としか思っていなかった氏に、親近感を抱いた。

JJ(熟女)も顔や胸の肉がそげるお年頃。
胸はしぼむが腹は出てくるので、アンコ型の力士にも親近感を抱く。でも本業は力士じゃないので、寄せて上げるブラをつけると、今度はワイヤーがきつくて耐えられない。

若い頃はブラで補正しなくても、胸にハリがあった。川畑氏も顔にハリがあったから、グラサンを維持できたのだろう。
「お互い、遠くに来ましたね」「年をとるとできないことが増えますよね、グラサンを耳にかけるとか」と縁側で茶をしばきたい気分だ。

前回書いたように、年をとるとできないことも増えるが、JJは「これでいいのだ」と全肯定の精神が身につくお年頃。それは仕事に関してもそうである。

若い頃は「仕事のできる人」と思われたくて、バリキャリっぽく振る舞っていた。それは自分自身が「できない自分」を認められなかったからだ。
「仕事のできない自分はダメだ」というコンプレックスは向上心にもつながるが、自分を責め続けるとメンがヘラッヘラになる。

たたでさえ日本人は真面目で勤勉で「KARAOKE」と「KAROSHI」という言葉を輸出している。ちなみにアメリカ人の友人が「日本のAVは人気で、BUKKAKEという言葉も有名だ」と教えてくれた。そんなもん世界に輸出するなよ。

BUKKAKEはさておき、かつては私も「ゴムパッチン思考」に囚われていた。ゴムが切れるぐらい、限界ギリギリまでがんばらないと自分を許せなかった。

「私も昔はゴムパッチンだったわ~」と振り返るJJは多い。だがJJが無理するとマジで血管が切れるし、そもそも体力的にもたない。なのでなるべく残業はしないし、有給も根こそぎとる、というスタイルに変わっていく。
そして「余裕がある方が視野も広がるし、いい仕事ができる」と気づくのだ。

私も40代になって「肩の力が抜けるとは、こういうことか」と実感した。私はフリーランスだが、会社勤めの友人たちも「出世に興味もないし、ぼちぼち機嫌よく仕事できればいいや」とマイペースに働いている。

アラサー向けの女性誌を読んでいたら、50代の評論家の女性が「若い女性は自己満足や承認欲求のために働くから、成長しない」「女性もどん欲に結果を勝ち取り、出世を目指すべき」「そうすれば仕事の面白さや喜びがわかる」と語っていた。

その女性は「自分はそんなふうに働いてきたから、あなたたちもそうしろ」と言いたいのだろうが、それは単なる押しつけだ。
人によって求めるものは違うし、働き方にも向き不向きがある。それぞれ自分に向いた働き方をできるのがベストだろう。

私は「女王蜂になってはならぬ」とJJべからず帖に刻んでいる。

クインビー(女王蜂)症候群という言葉がある。男社会で成功した「名誉男性」的な女性が、他の女性に厳しくあたることを表す言葉だ。

彼女らは「男以上に働いて出世競争を勝ち抜いてきた」という自負があるため「私はこんなに苦労したんだから、あなたたちも苦労するべき」と主張する。
後輩女性が性差別を訴えても「私が若い頃はもっと大変だった」「努力不足を棚に上げて、権利ばかり主張して甘えている」と批判する。

本人は男社会で今の地位を築いているため、現状のシステムを変えたくないのだ。それを否定することは、自分の成功も否定することになるから。

先日、アラサー女子からこんな話を聞いた。男性社員からのセクハラを女性の上司に相談したところ「スルーできない?私ならハイハイって流すけど」と言われたそうだ。
「なるほど、そのような姿勢では社内改革など不可能ですね」と、ろくろを回すポーズで上司の首をへし折りたいが、現実にへし折るのは難しい。

困っているから相談したのに「いちいち騒ぐな」みたいな対応をされた部下は「同じ女性なのにわかってくれない」と絶望して「誰も助けてくれない」と孤独を深める。そうやって、被害者が声をあげられない空気が作られていく。

そんな女王蜂は罪深いが、女王蜂も実は傷ついているんじゃないか。自分を傷つけた男社会に対する怒りを、後輩女子にぶつけているんじゃないか。部活で先輩にしごきを受けた人間が、自分も後輩をしごくように。

一方で「自分と同じ苦労をさせたくない」と、後輩のために道を作ろうとするJJもいる。私もそんなJJでありたいし、バキュームカーでクソを回収してまわりたい(前々回を参照)
出世競争に勝つよりも、私にはその方がずっと喜びが大きい。

「名誉男性の女王蜂にはなりたくない」というJJはいっぱいいる。お嬢さん方が困った時は、一緒にバキュームカーで爆走できる先輩を見つけてほしい。

私は女王蜂よりも女郎蜘蛛になりたい。女郎蜘蛛のメスはスズメバチも捕食するそうだ。メスの体長がオスの倍以上あるのも頼もしい。
またメスの作った巣に複数のオスが居候して、メスをめぐってオス同士で闘争が行われるという。女郎というより女帝と呼ぶのにふさわしい存在だ。

小学生の時から『天上の虹』を愛読していた私は、女帝に憧れていた。「私が大人になる頃には、女性の総理大臣も誕生してるのかな~」と未来を夢見ていたが、42歳になった現在もそんな気配は1ミリもない。

それどころか、政治家のセクハラ&男尊女卑発言が日々リリースされて、血管が何本あっても足りない日々だ。限りある血管を守るためにも、この世からセクハラや性差別を殲滅したい。

謝罪会見で「誤解される表現をしてしまった」という言葉をよく聞くが、相手や周りが誤解したのではなく、本人がセクハラや性差別を理解していないのだ。

「何でもかんでもセクハラや性差別と言われたら、何も話せない」とほざくボンクラには「じゃあ一生黙ってろ」と言いたいが、親切なJJなので教えてあげよう。「その言動を取引先の女社長にもするか?」と考えてみるといい。

「なんで結婚しないの?」とか「子どもは3人以上産め」とか、取引先の女社長には言わないだろう。それを誰に対しても言わなければ、失言は避けられる。

元財務次官の「胸触っていい?」「手縛っていい?」発言について「本人はセクハラを行なった認識はない」と報じられていた。「セクハラ罪という罪はない」と妄言を吐いた麻生大臣も同じ認識なのだろう。
だったらそれを、メルケルに言ってみればいい。「手縛っていい?」と言った瞬間、屈強なドイツ人のSPに拘束されるはずだ。

「自分より立場の弱い女には何言ってもいい」と考える老害がいる。そんな連中にセクハラ発言されても、メルケルじゃない我々には射殺してくれるSPもいない。麻生大臣はゴルゴ13に狙撃される政治家ファッションだが、この世界にデューク東郷は存在しない。

連載中のTOFUFUでも書いたが、セクハラ発言をされて「こんな時、どんな顔をすればいいかわからないの…」という時は、プーチンの顔をしてみよう。
「あまり私を怒らせない方がいい」という顔芸をマスターして、あだ名が「プーチン」になる頃には、セクハラに遭うことはなくなるだろう。

だが「こいつにはやると言ったらやる『スゴ味』があるッ!」という殺気は、一朝一夕では身につかない。
プーチンが難しければ、オードリー春日の般若はどうか。試しに鏡の前でやってみたら、わりと簡単にできた。皆さんもぜひ試してみてほしい。
それを夫の前で披露したら「ジャッキー・チェンのクレージーモンキーか?」と聞かれた。

オードリーでもジャッキーでも、いきなりモノマネをされたら敵はひるむはずだ。「セクハラは笑顔でかわせ」と言われるが、それだと被害者は永遠に増え続ける。
無駄な笑顔は封印して「自分は怒っている」と表明することが、この世からセクハラをなくす第一歩になる。

とはいえ、立場的に怒れない場合も多い。怒れないどころか、イヤなことをイヤと言えない場面もある。

先述のTOFUFUのコラムに書いたが、女友達は男性上司と地方出張した時に「ホテルの部屋で飲みながら仕事の話をしよう」と言われて、断れなかったという。それで上司の部屋に行ったところ、無理やり抱きしめられてキスをされた。

上司と部下のように圧倒的な上下関係がある場合は、断り方が難しい。「俺に下心があると疑ってるのか?失礼な!」と逆切れされて、仕事に影響が出たらどうしよう、と不安にもなる。

そんな時は、腹が痛そうな顔がおすすめだ。「生理と下痢で体調最悪なんですよ…」と苦悶の表情を浮かべれば、よっぽどマニアな男以外は萎えるだろう。

もちろん、異性の部下を部屋に誘う上司の方がおかしい。下心がなかったとしても「相手は立場的に断りづらい」と配慮すべきだ。
そしてもし「部屋で飲もう」と誘われて応じたとしても、合意したのは「部屋で飲むこと」だけだ。

そんなの言うまでもないことなのに、加害者は「部屋で飲もうと誘って応じたのだから、性的行為に合意があった」と主張するし、世間も「女の方もその気だったんだろ」と被害者を責める。
その手の意見を聞くたび、血管が16本ぐらい切れる。在庫がなくなったらどうしてくれる。

男性誌から「ヤレる女の見分け方」「ワンナイトに持ちこむ方法」といった記事の取材オファーを受けることがよくあった。
私は今も売れてないが、もっと売れてなかった時代も、その手の仕事は全部断ってきた。売れてないのでお金はほしかったが、それより女性読者を裏切らないことの方が、何億倍も大事だったからだ。

後日、自分が断った記事をコンビニで立ち読みすると、ナンパ師の男が「酔わせて部屋に連れこめ」「酒で判断力を鈍らせろ」などと答えていて、血管が32本ぐらい切れた。

作家デビューして13年が過ぎ、社会人の女性から「中学生の時から読んでます!」と言われると「ご立派になられて…」と涙ぐみつつ「売れてなくても、仕事を選んできてよかった」と思う。

今の中学生が大人になる頃には、もっと女性が働きやすい社会になってほしい。

私が新卒で入社した広告会社には、飲み会で男性社員が全裸になる文化があった。だが私が退職した後、コンプライアンス室に苦情が入ったらしく、全裸になった社員が休職処分になった。それ以降、全裸文化は滅亡したという。

「こんなことはやめるべき」と声をあげた先人たちの努力によって、少しずつ社会は変わっていく。

男社会・体育会系・保守的という地獄の三拍子がそろった大企業で働くJJ仲間から、こんな話を聞いた。
新婚の女性社員が「体調が良くないから飲み会はパスしたい」と男性の部長に伝えたところ「帰って子作りするのか?(笑)」と言われたらしい。

友人は「今まさに妊活中かもしれないし、妊娠を下ネタ扱いするんじゃねえ!!」と血管が切れたそうだが、「その時『それはセクハラです!』と男の先輩が注意してくれたのよ。その先輩は夫婦で不妊治療してたんだけど、子どもを授からなかったみたい。だから、自分のこととして考えられたのかもね」。 

このように、一緒にバキュームカーに乗れる男性もいる。
男社会で日々血管が切れていると、おっさん嫌いが加速しがちだが、無差別にウンコを投げるゴリラになってはいけない。それこそ、我が夫だって正真正銘のおっさんだ。

夫に「女郎蜘蛛はメスの方が大きいなんてカッコええわ~」と言うと「それは人間の発想だ」と返された。
「動物界でメスの方がオスより大きい種は珍しくない。アンコウは種類によってはメスの体長がオスの10倍以上あって、オスがメスの体に寄生して一体化する」

一体化?!と生命の神秘に驚きつつ「来世はアンコウのメスも悪くない」と思った。
相撲のアンコ型も「お腹が膨れてぷよぷよしたアンコウが太った体型の力士に似ている」ことから名前がついたらしい。
アンコウに親近感を抱きながら、ぷよぷよした腹の肉を両手でわしづかむJJなのであった。

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