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お金の使い道の満足度は購入方法で大きく変わる

ここ十年以上、腕時計をしていない私。最近は走る時でさえ腕時計をしなくなりましたが、実は先日、
「時計を購入してみようかな?」
と思う出来事がありました。

それは、世界の2大オークションハウスの1つであるクリスティーズの、時計(主に腕時計)のオークションに参加したこと。

これまでは、「時を刻む」という時計の機能的な要素に必要性を感じず、アクセサリーとしての意味も見出せずにいました。そのため、時計にはほとんど興味がありませんでした。

ところが、です。

パドル(マラソンのゼッケンのような番号札、オークションの参加証)を持ってオークション会場に入り、様々な時計が売買されていく様子を目の当たりにしたり、それに関してクリスティーズの担当者から色々教えていただいたりしているうちに、こうしたオークションで時計を購入してみたい、と感じるようになったのです。

特に、担当者の説明に心を動かされました。何十年、何百年と評価され続ける価値ある品であることや、その時計のどこにどんな特徴があって何がすごいのか、など、1つ1つの時計の歴史やドラマを語ってくれるのですから。

そしてそれらが、会場に集まった人々、インターネットや電話を通じて参加している世界中の人々によって落札されていきます。

様々な人に大切に取り扱われながら世界中を旅している時計にロマンを感じ、私も一時的にその時計の所有者となってまた別の人へと繋いでみたい、と思うようになったのです。
モノの持つさまざまなニーズを満たすことができる有用性を、経済学で「使用価値」と言いますが、まさに、そういう時計を保有し利用することで心が満たされるという私なりの「使用価値」が見出されたというわけです。

今回はオークション会場での見学に終わりましたが、どこで誰から何をどうやって購入するかで、自分の価値観が変わるのだということを実感しました。

交換価値のおまけがつけばお金をもっと上手に使える

オークションでは、事前にカタログや実物を見て、担当者と相談しながら、購入するかどうか、購入するならいくらくらいが妥当かといった戦略を立てることができます。

そして、会場にいる場合には、希望の品が希望の額にさしかかったところで「ビッディング」といって自分のパドルをあげてオークショニア(ハンマーを持ってオークションを仕切る進行役)に意思を伝えます。

一番安いものでも何十万円もしますから、そう簡単に「ビッディング」とは言えませんが、仮にオークションで50万円の時計を購入した場合、それはとりもなおさず同額で売却できる可能性を秘めているということ。ですから、他で50万円の買い物をするより、ほんの少しだけ気が楽になります。それがオークションの面白いところだと思います。

また、オークションにかけられているというだけで、取引できるだけの品であることはクリスティーズによって確認されていますし、カタログには取引の参考価格も記載されています。

そもそもすでに誰かが使用した中古品ですから、私が購入して使用したあとで売却する場合でも、「使用済だから」という理由で価格が大きく変動することはありません。

もちろん、いざ売ろうという場合に価格の保証はありませんが、オークションで購入するということは、オークションで売却できるという「交換価値」のおまけまでついているのです。売却まで視野に入れれば、自分の負担は購入額と売却額との差額になります。

お金は自分なりに価値の見いだせるものに使うことが何よりも大切です。満足度の高い使い方ができれば、収入が増えなくても豊かになります。満足度を金額で測ることは困難ですが、自分なりの「使用価値」を見極める力を養うことができれば、もっとお金と上手に付き合えるようになります。

そこに加えて、市場での「交換価値」もあれば、売却によって負担額を減らすことにもつながります。

モノが持つ「使用価値」と「交換価値」の双方を見出せる買い物ができれば、実質的な収入が増えるようなもの。

そんなことを考えさせられた、初めてのオークション体験。

もし次の機会があったならば、担当者と一緒に戦略を立てて、今度は会場で「ビッディング」と言ってパドルを挙げてみたいと思います。

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