高知旅行、初日。

「横山隆一記念まんが館」のあとは、アーケードの長い商店街をのんびり歩き、「ひろめ市場」へとむかう。

「ひめろ市場」は、言うなればドデカい屋台村。飲食店がひしめきあい、それぞれの店で買ったごちそうを、共有のフードコートで食べられるシステムである。

 ものすごい人だった。満員電車さながらの通路をゆるゆると進みつつ、両脇の食べ物屋の陳列棚をのぞいていく。

 春の高知といえば、初ガツオ。新鮮なカツオのたたきが並び、他にも、四万十川の天ぷら、できたての鯛飯など、あれやこれやとおいしそうである。

 問題は席だ。ごちそうを買っても、席がないと食べられない。まずは席の確保が先決である。

 食べ終わりそうなテーブルを、鷹の目のように狙っている人々がいっぱいいる。負けじと全神経を集中させて、人の動きを見る。「あっ、あそこ空きそう!」と、進みかけたときには、カルタのときの「はいっ」という手の動きくらいのスピードで、他の人に取られていたのだった。

「ひろめ市場」内を20分ほどぐるぐる周遊し、ようやく、空席をゲット。

「まずはわたしが行ってくるよ」

 同行のうちの彼に席番を頼み、食料の調達。カツオのたたきを買い、人気の屋台餃子で、餃子を二人前注文した。注文してから1時間ほどかかるらしく、だいたいの席を申告しておけば持ってきてくれるらしい。

 あとは、帽子パンも買った。麦わら帽子のような菓子パンで、味はメロンパンの友達みたいな? こちらも高知の名物である。

 席が確保でき、心にゆとりが生まれる。基盤となるところが、人には必要なのである。ハイボールを買って乾杯し、テーブルに並んだものをパクパク食べる。

「ちょっと見てくる」

 と、順番に市場をぐるぐるし、おいしいものを仕入れてくる楽しさといったら!

 一時間後に席まで届けられた餃子は、揚げたようにパリバリとこおばしく、あとで調べたら地元でも大人気のお店らしかった。

 夕暮れ前にはすっかりおなかがふくれ、もう夜ご飯これでいいよね、などと安上がりな初日なのであった。

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