この二か月ほど、日本のサッカー事情はいろいろトピックスがありすぎて濃厚すぎる。

 ハリル・ホジッチ解任騒動から1円訴訟問題。
 それに伴った造反選手がいるという噂や、海外で結果を残している若手選手を選ばずに代理店に配慮したベテランメンバーしか選ばないと揶揄された「忖度ジャパン」。
 4年前のW杯の時のメンバーとほとんど変わり映えせず、平均年齢だけは上がってしまった「介護ジャパン」等々。
 その上、西野新監督の初陣では、壮行試合のガーナ戦にも完敗して相手監督から「メディアの皆さんは監督のことを責めないであげて」と慰められていた。
 3月の欧州遠征時も重苦しい空気だった日本サッカーの停滞感は、監督が代わったところでそうは簡単には変わってくれないのである。
 ハリルは本番まで秘策を温めていると思っていたのに、温めたまま解雇されてしまった。
 コミュニケーション不足が原因という解雇理由だったが、せめて本番用の秘策を協会にだけでも伝えていれば、解任にはならなかったのではないかと思ってしまう。
 そう考えると、やはりコミュニケーション不足だったのである。

 W杯での勝利を求めるがあまり、ハリル・ホジッチを大会直前に解任という無礼な仕打ちを喰らわせ、もうなり振り構わないで勝利の可能性を1%でも上げようとしているのにも関わらず、ピッチ上では横パス・バックパスばかりの現実を見させられるとやるせなくなり、応援してしまう気も失せてしまうのは私だけが思うことではないだろう。
 ガーナ戦前の合宿時。代表チームの練習風景というのがネットにアップされていた。
それを見て私は思わず目を疑った。
 センタリングからのシュート練習をしている様子なのだが、GKしかディフェンスがいないのにも関わらず、まるでゴールが決まらないのである。
 打つシュートはことごとく枠を外れ、たまに合ってもキーパーにキャッチされてしまう。
 本当にどうかと思うくらいにシュートは決まらない様子を見ていると「これがこの国を代表するサッカー選手たちなのか……」と思わずにはいられないこと必至である。
 世間的にも、「今回の代表チームほど素直に応援できないのははじめてだ」という声をよく耳にする。
 対戦国のポーランドがこんなことを言ってたらしい。
「日本は良くない形で大会に臨むこととなったが、これ以上失うものがないもの事実だ」
 失うものがないものほど怖いものはない。
 つまり玉砕覚悟で試合に臨んでもらって、番狂わせを起こすことを期待するしかない。

 私はひそかに期待している。
 これだけ何の期待もされていない、むしろ負けて欲しいとまで揶揄される西野ジャパンが、案外、番狂わせを起こしてしまうのではないかと……。
 そんなことが起きるはずがない、と誰が断言できるだろうか?
 イタリアやオランダが出場できないW杯など誰も想像できなかったはず。
 勝てば官軍、負ければ賊軍という言葉通り、もう既に賊軍扱いの日本なのだから、負けても当然。相手チームに後ろから危険なタックルをしようものなら、もう言わずもがなである。
 しかし、万が一にでも決勝トーナメントに進むことができたら、日本国民の総手の平返しが待っている。良くも悪くもいろいろな意味で痛快な気持ちになれて、「世の中なんて、なんも信じられないなあ」などと自虐な気持ちを噛みしめながら、しみったれた酒を飲むつもりだ。
 これまでの積み上げをほとんど放棄して臨むW杯には一体どんなドラマが待ち受けているのだろうか。
 奇跡のジャイアントキリングが起きるのか。
 それとも、
 1試合目終了後「切り替えて、次の試合に集中」
 2試合目終了後「まだ可能性は0じゃない」
 3試合目終了後「もう4年後に向けて戦いは始まっている」
 という、虚しいテンプレ言葉を聞かされてしまうのだろうか。
 夢も希望もない現状だが、せめてもこんな楽しみ方を見出すしか、しょうがないのである。

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