僕は高校デビューをしたのだけど、たぶん高校時代が人生のピークだったと思う。そんぐらい、楽しくて、馬鹿げてて、甘酸っぱかった。年がら年中、いっつも男ばっかでつるんでたんだけどね。

 高校3年生のバレンタインデー。僕ら仲良しの男7人ぐらいで、仲間のうちのひとり、いじられ可愛い系男子のナカジを騙くらかすことにした。バレンタイン当日の朝、ナカジの靴箱に嘘の手紙をしのばせる。ナカジさんに渡したいものがあります、放課後、3-A教室で待ってます、って女子に書いてもらった嘘の手紙を。

 昼休み、みんなで教室に集まって弁当を食う。僕らはなんも知らない振りをして、チョコ欲しかばい~、だの、どうせ俺らみたいのはもらえんど(笑)、だの話すんだけど、ナカジ、その話題には全然入ってこない。なんか明らかにもじもじしてる。僕らはすげー笑い出したいのをこらえながら、その様子に気付かないふりをする。ああもう放課後が待てねえ~!

 放課後。生徒はみんな部活に出るか帰宅しているかで、校舎の中はひっそりと静まり返っている。3-A教室に入ってくる、ナカジ。そして彼はすぐに「く、くそったれが~!」と絶叫し、膝から崩れ落ちる。だって教室で待っていたのは、全員全裸の僕ら男子7人だったのだから。そっからナカジとみんなでゲラゲラ笑いながら、勢いで教室を飛び出して全裸で廊下をダッシュしたりしながら、誰かの「打ち上げ行くか!」っていう言葉でいったん終了。学ランを着て、みんなで靴箱に向かう。いや~、くっだらねえんだけど楽しいなあ、そんでまた、こんなくだらんことでみんなと打ち上げすんのが楽しいんだ、なんて思いながら靴箱空けたらあれっ!?僕の靴箱に手紙とチョコが入っていました。心拍数が急激に上がる。は?そんなんあるん?うっわ~超楽しい、しかしこれはみんなには言えんな、この盛り上がりが冷めちゃうし。いやしかし俺いまほんと黄金期にあるな~、なんかもう全てがおもしれ~!!!!僕はささっと手紙とチョコをカバンにしまい込み、みんなの後を追いかけました。

 高校近くのファミマ前の駐車場がみんなのたまり場で、まずはそこでひと休み。どこの店行く~?なんて話してたら、仲間のひとり、ハヤシがふと「ていうかガチでチョコもらったりしたやつ、おるん?」なんてことを言い出した。あっ、やべ。「メリヤス(僕の当時のあだ名)とかどうなん?」うおっ、いきなり俺にくる?いや~どうしよう、言えねえよな~、でも言っちゃおうかな~、てか言っちゃいたい!俺はちょっとお前らとは違うんだよ的優越感に浸りたい!「実は・・・もらっちゃいました!!!!」「ええ~っ!!!!」やばい、なんかもうみんなが興奮状態に。「メリヤス、チョコ見せてくれよ!」なんてハヤシが言ってくるから僕も調子に乗って「これです!」とか言ってチョコをハヤシに渡す。するとハヤシはさらに興奮状態に入って「うおあああ!これがチョコですか!バレンタインデーチョコというやつですか!すみません、食べさせていただきます!!」といきなり封を開けてチョコを取り出し、自分の口に入れようとする。ややややめろ、もらったのは俺、俺が食うから、よこせハヤシ、よっしゃゲット、さあ食うで~!念願のバレンタインチョコや~!食ったるで~!パクっ!!!

 かっ、かっ、辛ぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!

 ぎゃははははは!!!!みんながアホみたいに笑ってる。えっ。どういうこと?「はいメリヤス、わさび入りチョコ召し上がりました~!」まじか。まじか。これ仕組まれてたんか。なんやそれ。高度すぎるやろ。お前らなんなん。まじなんなん。こんなん、くっそおもしれえじゃねえか~!!!!その夜はほんと遅くまで、みんなでゲラゲラ笑いながら、夢みたいな時間を過ごしました。

 打ち上げで、仲間のひとり、チョコ作りを担当したともちゃんは「最初はわさびじゃなくて、うんこ入れようと思ってたけどギリギリのところでやめた」と言っていました。死んじまえ!

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