代々木公園で「ベトナムフェスティバル2018」なるものが開催されるというので、でかけてみることにしました。
 東京に20年近く暮らしていながら、代々木公園にはほとんど足を踏み入れたことがありません。日曜の朝、原宿駅から公園へ。
 公園に入ったら「フェスティバルはこちら!」みたいな案内があり、赤地に黄色い星のベトナム国旗がたなびいていることを想像してやってきたのですが、ベトナムのベの字も見あたらず。フェスはどこだ。

 なんとかなるだろうと、やみくもに歩いてみることに。
 いやー、びっくりしました。まるでニューヨークのセントラルパーク。外国人のみなさんと外国人風の日本のみなさんが混じり合い、あっちでヨガ、こっちでヨガ。もしくは輪になって、何かしらの運動をしています。
 公園全体が、きらきら、きらきら。「やる気! 元気!」みたいな陽のオーラがまぶしすぎて、くらくらしてきました。

 フェスはどこだ。
 ふらふらと歩いていたら、ベトナム人らしき青年グループを発見。私は彼らに賭けることにしました。一定の距離をおいて、あとをつけます。
 すると向こうからまた別のベトナム人らしき青年グループがやってきました。言葉はわからないのですが、どうやら、
「お前たち何でこっちに歩いてんの」
「フェスどこよ」
「あっちだよ」
「まじで。全然違ったわー。連れてって」
 みたいなやりとりののち、見事なUターンをかましてくれました。
 いったん彼らを通り過ぎ、距離をとったうえで私もUターン。

 フェスティバルは、大きな道路を挟んだ、全然違う場所でやっていました。NHKホールの横っちょ。ここが代々木公園のイベントスペースなのですね。
 すんごい量のベトナム料理の屋台が出ています。無駄に公園を歩きお腹ぺこぺこなので、ベトナムのバケットサンド「バインミー」を買い、そのへんに座ってむしゃむしゃ。

 お腹が落ち着いたので、会場の散策開始。
 ベトナムにはまだ行ったことがないのですが、願望だけは常にあり、ガイドブックは何冊も持っています。 
 ビニールテープでつくられたカラフルなかご、少数民族の刺繍がほどこされた布小物、プラスチックのチープな台所用品。
 そんな憧れのベトナム生活雑貨を求めてやってきたのですが、そういったものは特になく。ほとんどが食べ物の屋台で、あとは、ベトナム観光や、日本に暮らすベトナム人向けのPRコーナーでした。

 全体像がつかめたところで、野外ステージへ。
 「在日ベトナム学生青年協会」のショーがはじまりました。
 ピンクの衣装を着た女学生たちがへらへらと踊っています。発表会みたいな感じなのかなぁと眺めていたら、カラーサングラスをかけて、髪を横分けにきっちりセットした青年が出てきて、ポップ歌謡を歌いました。歌、うま! 
 次に、またしても、カラーサングラスをかけて、髪を横分けにきっちりセットした青年がでてきて歌いました。さらに、うまっ! 
 ベトナムで人気の歌なのでしょうか。客席にマイクを向けるとコールが返り、ノリノリです。良いショーでした。

 正午。完全なる夏日。
 日光にやられ「目が、目が~!」という状態になったので、ベトナム式顔ツボセラピー「ディエンチャン」が体験できるテントにかけこみました。
 足裏同様、顔にもツボがあるそうで、棒状の器具でぐりぐり、ぐりぐりと刺激されます。
 気持ちよく受けていたのですが、生え際の真ん中あたりを押されたときに痛みが走りました。膀胱のツボだそうです。
 20年前、シンガポールで足つぼマッサージを受けた記憶が突如よみがえりました。激痛で身をよじる私に、おばちゃんは「ココ、ボーコー、ビール、ダメ、ボーコー、ビール、ダメ」と言ったのです。そのことを今の今まで忘れていました。

 マッサージでリフレッシュしたら小腹がすいてきました。
 フォーでも食べようと屋台エリアに戻ると、すごい人だかり! どこも大行列です。
 目をこらして見渡すと、会場のすみっこに、飾り気のない質素なテントを発見。ベトナム大使館のブースでした。
 風邪のときにおかあさんがつくってくれる稲庭うどんみたいな、やさしいお味のフォーをいただきました。

 大使館では、えびせんも買いました。100円です。やさしいね。
 気づくと、私の手には缶ビールが。「333」と書いて「バーバーバー」と読む、ベトナムのビールです。ごめん、膀胱。

 そうこうしているうちに、伝統芸能・水上人形劇の時間が迫ってきました。
 特設ステージがつくられていたので、是非観たいものだと、開演時間をチェックしていたのです。
 30分前なのに、すでに満席で、立ち見もいっぱい。少し離れた木陰に座り、えびせんをほおばりながら待ちます。
 上演スタート。音は聞こえど何も見えません。身長150センチでは、とんでもはねても、とても無理。あきらめてその場を去りました。

 それにしても暑い。いつしか手には、生ビール。がんばれ、私の膀胱。
 焼き鳥にエビの串焼き、何を食べてもおいしいベトナム。食材屋さんでナンプラーを買い、フェスティバルをあとに。

 腹ごなしに、再び公園をうろうろ歩くと、かわいい平屋の建物がありました。白い壁に、水色のドアや窓。おとぎ話に出てくるような、ちいさいおうち。
 1964年の東京オリンピックで、オランダ選手の宿舎として使われていたそうです。今度のオリンピックも、こんなのだったらいいのになぁ。そしてそのあと、住まわせてもらいたい。

 帰り道は、原宿、表参道、渋谷と歩きました。今さらですけれど、公園にも街にも、東京って、たくさん人がいるんですね。
 ベトナムにいきます。フェスではなく国へ。
 かわいい生活雑貨を探して、水上人形劇を観て、333を飲んで。数日間、東京の人口をひとりぶんだけ減らしたいと思います。

*きょうのごはん* ベトナムのバケットサンド、バインミー。具沢山で、どこをかじっても、いつまでもおいしい。

*きょうの昭和* 昭和39年の東京オリンピックで使われていた選手の宿舎。代々木公園内にあります。次のオリンピックもこんなのを希望。

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山田マチ『ひとり暮しの手帖』

これは、ひとり暮しの山田の手帖です。

実家をはなれて、およそ20年。
これまでも、きっとこれからも、ひとり暮し。
ここには、ひとり暮しのいろいろなことを書きつけます。
このなかのどれかひとつくらいは、あなたの心に届くかもしれない。
いや、ぜんぜん届かないかもしれない。
そんなふうな、
これは、ひとり暮しの山田の手帖です。