わたくしの記憶喪失みたいな話をよく聞いていただいておりますが、何故か昔の事はよく覚えているものでして。特にドラマや映画。下手したら台詞をほぼほぼ丸暗記、なんて事も珍しくなく。その中でも本当に大好きな、いや、大好きすぎるドラマが2つありまして。なんと先日、その主人公の方々と立て続けにロケをし、その大好きな名場面を一緒に再現していただくと言う、「私もう、死ぬんじゃないか」レベルの幸せチャンスが舞い降りてきたのです。

 その一つは「ADブギ」。あの“ブギ三部作”のラストを飾る名作です。ダウンタウン浜田さん演じる主人公の巧はチーフAD。「5年経ったらディレクターになっておまえの一生演出したるわ。おまえが主演女優で俺が監督」なんて言って付き合いだした彼女・直子(相楽晴子さん)としょっちゅう喧嘩しながらもどこかでお互いの事を思い合いながら同棲している。

 実は当時、私にも人生初めての“彼氏”という存在がおりまして。その彼も出会った頃は「将来映画監督になるんだ」という夢を熱く語っておりまして。しかもうっかり舞台女優を目指していた私に「いつかあさこを撮りたい」なんて言うADブギのような台詞まで言ってくれちゃったわけで。そりゃあ恋を初めて知ったばかりの私は働かない彼の為に、そして怖いおじさんが取り立てにくるほどの借金をした彼の為に、馬車馬のように無休でバイトしますよ。そんな彼に「ホントにあんたは!」なんて言いながら同棲してたもんですから、もう私の中で「ADブギ」なんですよ。

 しかもその「ADブギ」に出てくる巧のプロポーズが、私の中で一番最高のプロポーズなんです。簡単に言ってしまうと要は「おまえとおるとおもろいんや」なんです。正直「綺麗だ」とか「かわいい」と言う言葉と無縁な人生を送ってきた私にとって「おもろい」は最強の褒め言葉であり、信用おける口説き文句だったんですよ。だってそりゃあ美人であるに越したことないであろう中、「おもろい」が好き、なんてなんか“マニア”と言うか。絶対な感じがすると言うか。

 そんな憧れのプロポーズシーンをなんとまさかのご本人・浜田さんとやらせていただけることに。毎日放送「ごぶごぶ」という浜田さんの番組に私がゲストで呼んでいただきまして。この番組はゲストが誰かも何をするかも浜田さんには内緒。ゲストの“浜田さんとやりたい事”で進んでいくのですが、こんな風に浜田さんと二人で出かけるなんて事は一生ないと思うので、思いっきりやりたい事を伝えました。その一つが「ADブギ」のプロポーズシーン。今回はわたくしが若き頃に購入しました「ADブギ」のビデオがありまして。DVDじゃないですよ。VHSです。その最終巻・第4巻の表紙がそのプロポーズの後の二人のチューの直前写真なんです。図々しくもその再現をお願いしました。更にもう一つ。チュー直前でストップしたらカメラマンさんがシャッターを切る。その瞬間、主題歌の楠瀬誠志郎「ほっとけないよ」をかけていただくべくスタッフさんにカセットデッキをお渡ししたりして。そんな夢のような時間はあっと言う間に終了。でも一生残る大切な記念が出来ました。ありがて過ぎです。

 そしてもう一つは「男女7人夏物語」。言わずと知れた明石家さんまさんと大竹しのぶさんの名作です。“秋物語”ももちろん好きなのですが、“夏物語”は超特別。この当時は高校生だったのでそんな恋愛知らなかったけれども、後にお付き合いした方が“なんでも言えちゃう自然な関係”“関西と関東の組み合わせ”“親友みたいな感じからお付き合いを始めた”などなど「わあ! 一緒!」と思っちゃう部分が多々ありまして。高校生の時も大好きだったけど、後からまたまた勝手に自分と重ねて、再びハマりまくったドラマなのです。

 そんな“夏物語”で一番好きなシーンはやはり土砂降りの中での告白シーン。「おまえが好きやのや!」のシーン。そのシーンの再現チャンスもなんと、やって来たのです。先日さんまさんと女芸人17人で一泊二日の旅をするという夢のような企画がありまして。その中でオンエアされてないのですが裏でたっぷり“夏物語”させていただいたのです。そもそもファッションテーマ“男女7人夏物語の賀来千香子さん”で参加した私。夜の宴会では“夏物語”でおなじみの“ブーツ型ビールグラス”を用意。ドラマと同様、“ブーツのつま先を上に向けて飲んでビールがカポッと顔にかかっちゃう”スタイルで乾杯。そして夜のカラオケで“あの”チャンス到来。鬼奴ちゃんがドラマの主題歌「CHA-CHA-CHA」を入れたのです。チャンス! さんまさんに「あのシーンやってもイイですか?」と勇気を出して言うと「いいで。」と快諾。奴ちゃんが歌う「CHA-CHA-CHA」をBGMに「恋人は千明でしょ! 千明の心配しなさいよ!」と桃子の全台詞を完コピで言うと、最後さんまさんが「おまえが好きやのや」。32年前の私、見てる? まさかのご本人で実現したよ!

 奇しくも今やお笑いの大先輩のお二人と、ドラマ当時は自分がお笑いという仕事に就くなんて思ってもいなかった私が、こんな風にご一緒させていただくようになり。更には大好きなドラマの再現をやっていただくようになるなんて、本当に奇跡としか言いようがない。こんな事は二度とないだろうから、後はもう妄想の中で再現しよう。「東京ラブストーリー」の“学校の柱に書く相合い傘”と「ロングバケーション」の“うっかり同居”……あ。「少女に何が起こったか」の“紙のピアノじゃ、指が沈まない”もいいなぁ。ああ、もうドラマが止まらない。ご存じない世代の方は是非DVDでどうぞ。

【今日の乾杯】
日テレの滝菜月アナからいただいた彼女の故郷・北海道音更町のアスパラ。シンプルに茹でてみたのですが驚くほどに味が濃く、結局添えたマヨネーズもつけずに完食。北海道、さすが。

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いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。』

寂しいだか、楽しいだか、よくわからないけど、日々、一生懸命生きてます。人気芸人の、笑って、共感して、思わず沁みるエッセイ集。全力で働いて、遊んで、呑んで、笑って、泣いて……の日々。ぎっくり腰で一人倒れていた寒くて痛い夜。いつの間にか母と同じ飲み方の「日本酒ロック」。緊張の、海外ロケでの一人トランジット。酔ってヒールでこけて両膝から出血の地獄絵図。全力の悪ふざけ、毎年恒例お誕生会ライブ。女性芸人仲間の感動的な出産。“呑兵衛一族”の冠婚葬祭での豪快な呑みっぷり。40歳で体重計を捨ててから止まらない“わがままボディ”。大泣きのサザン復活ライブ。22歳から10年住んだアパートの大家さんを訪問。20年ぶりに新調した喪服で出席したお葬式。恒例の、オアシズ大久保さんのご家族との旅行。etc.