腸の働きが低下する「停滞腸」は、大腸がん、糖尿病、動脈硬化、うつ病の発症などに大きく関わっていることが、明らかになってきました。
 人間の寿命は、まさに腸の健康状態で決まると言っても過言ではありません。
寿命の9割は腸で決まる』では、腸の調子が悪いとどのように危険かを具体的に示し誰でもすぐ簡単に取り入れられる食習慣・生活習慣をアドバイスしています。
 6月14日の日本テレビ「世界一受けたい授業」にも出演、4万人の腸を診てきた医師・松生恒夫先生が、腸と寿命の驚きの真実をお伝えします。

(写真:iStock.com/studiovespa)

腸内環境の悪化は、様々な病気を引き起こす

 私は、消化器内科専門医として「便秘外来」の看板を掲げ、のべ4万名以上の方の大腸内視鏡検査をおこなってきました。この経験を通して実感するのは、便秘の解消はたんに便を自然に排泄させ排便回数を増やすことにとどまらず、腸そのものの健康を取り戻し、それによって体全体の健康をも取り戻していく、ということです。つまり腸の健康を維持することが、ひいては長寿につながっていく、ということなのです。

 最近、書店に出かけると「いかに長生きするか」といったテーマの本が目につきます。しかし一番真剣に考えなければいけない問題は、「長生き」のみではなく、「いかに健康的に過ごす人生を手に入れるか」ではないでしょうか。健康な状態で長生きすること、つまり「健康長寿」こそ、これからの社会ではますます大切になっていくはずです。

  「健康長寿」を念頭に置いたとき、腸をいたわり、腸に意識を向けた生活をすることには大きな意味があります。「腸の健康が大事なのはわかるけれど、『長寿につながる』とまでいうのは大袈裟じゃない?」と思う方がいるかもしれません。しかし、そんなことはありません。多くの病気の根本的な問題とアンチエイジングは、大腸と大きく関係しているからです。抗加齢学が専門の医師である後藤眞氏も、著書『老化は治せる』(集英社新書)のなかで、便秘が長寿の敵であることを指摘しています。

 詳しいメカニズムは本書で説明しますが、小腸は、ウイルスや細菌など外敵の侵入を防ぐリンパ球の宝庫です。体にあるリンパ球の6割は小腸にあるといわれていますから、小腸の機能が低下すれば全身の健康を守ることが難しくなります。
 そして、消化管には最近当たり前に耳にするようになった腸内フローラ(腸内細菌叢そう)という、免疫機能にかかわりがあるとされている?個ほどの細菌が棲んでいるといわれます。さらに小腸・大腸の腸管では多数の神経細胞が互いにネットワークを形成し、脳とも直結していることがわかってきました。

 つまり、健康な体の「土台」となる器官が、小腸や大腸なのです。

 腸は全身のさまざまな部位との影響関係が大きいため、腸内環境が悪いと、実際、次に挙げるような疾患や症状を引き起こしやすくなります。糖尿病、慢性便秘症、メタボリックシンドロームなど代謝・内分泌に関わる疾患。潰瘍性大腸炎、クローン病などの自己免疫性疾患。うつ病などの精神神経疾患。悪性腫瘍(がん)。大腸炎。肝臓疾患(ASH、NASH)。動脈硬化症や心不全などの循環器疾患。頭痛や肩こり。ざっと挙げるだけでもさまざまな疾患があります。

「停滞腸解消」が、健康寿命を延ばす鍵となる

 寿命という観点でいうと、腸と関係するこれらの疾患にかかることで、具体的に何歳ぐらい寿命が変化するのかについて、データが揃っているわけではありません。しかし、一例を挙げると、糖尿病にかかる一因は腸内環境の悪化です。糖尿病患者の2001~2010年における平均寿命は、男性で71・4歳、女性で75・1歳という明らかなデータが公表されています(中村二郎・愛知医大教授を代表とする研究チームによる全国調査の結果)。すなわち、糖尿病になると、日本人全体の平均寿命(2017年厚生労働省発表のもの)より男性が約9・6歳、女性が約12歳、寿命が短くなるといえるそうです。
 さらに、がんは日本人の死亡原因の第1位ですが、がんのなかでも近年特に急増しているのが大腸がんです。最新のデータによると、がんによる死亡率を発生部位別に見た場合、大腸がんは女性で第1位、男性では第3位で、死因のなかでも上位にあります(厚生労働省「人口動態統計」より)。大腸がんはまさに、日本人にとって非常に身近ながんになっているのです。

 こうした事実を知ると、腸の機能の衰えが、いかに体全体に悪い影響を与え、寿命にも関わってくるのかについて、真実味を覚えていただけるのではないでしょうか。機能が低下した大腸の状態を、私は「停滞腸」と名づけましたが、この「停滞腸」の解消こそ、長寿への大事な鍵となります。「停滞腸」のままでいることは、あたかも寿命を早送りし、健康寿命を縮めるようなものです。

 腸(小腸・大腸)を健康にすることで、早送りされた寿命を巻き戻し、さらなる健康長寿へと導いていくために書いたのが、本書です。本書に盛り込んだメソッドや食習慣・生活習慣を実行すれば、いまからでも寿命は巻き戻せます。

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松生恒夫『寿命の9割は腸で決まる』

100歳まで元気な腸を作る!
○「停滞腸」の人はお腹に3ℓもガスが溜まっている
○便秘薬に依存している人の腸は真っ黒
○赤身肉は大腸がんのもと
○腸が生まれ変わる7日間リセットプログラム
○健康長寿の決め手は「和食」ではなく「地中海式和食」
○身近な食材で便秘解消 など