フランス語の教師をはじめておよそ30年になる中条省平さん。フランス語に挫折してしまったあなたのために、「フランス語の大体が頭に入り、フランス語を恐れる気持ちが消える」ことを目指して書かれた『世界一簡単なフランス語の本』から、フランス語の動詞の基礎についてご紹介します。
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いよいよ動詞を使った文章に触れてみましょう!

 第1章で綴りと発音の規則を憶え、第2章で名詞と冠詞と形容詞と数詞の組み合わせ方を理解しました。

 しかし、まだ途切れ途切れのフランス語の単語を並べているだけで、まとまった意味を持つ文章に接していません。

 ですから、この章では、フランス語の簡単な文章をマスターしてみましょう。

(写真:iStock.com/Demkat)


 文章を作るためには、動詞が必要です。ここでは、フランス語の基本となる動詞 être(エトゥル)と avoir(アヴワル)と aller(アレ)を使うことにします。

 発音がちょっと変だと気づいたあなた、鋭いですね。 être (エトゥル)の発音はこれまでやった規則どおりですし、avoir (アヴワル)の場合は careful の原則に従って r が発音されているのに、aller の場合は r が発音されていません。つまり、aller (アレ)は例外的な発音になるのです。

 さて、être は、英語でいえば be動詞に当たるもので、「~である」という意味です。英語の be動詞に活用があるように、フランス語の être にも活用があります。

 

 動詞の活用形は、主語によって決まります。主語には基本的に6つの形があります。

 1人称単数(私)、2人称単数(君)、3人称単数(彼、彼女、それ)、1人称複数(私たち)、2人称複数(君たち)、3人称複数(彼ら、彼女ら、それら)です。

 英語のbe動詞でいえば、I am、you are、he(she, it) is、we are、you are、they are ということで、I とhe(she, it) には固有の活用形があるのに、ほかの異なる4つの人称ではareが共通して使われるという、なんだか不可解な方式になっています。

 フランス語の動詞の活用はもっと規則的で、6つの人称それぞれに対応する être の活用形がちゃんと決まっています

 これから学ぶ活用形はすべて現在形です。つまり、当然、過去形の活用もあるわけですが、それはもっとあとに回すことにして、まずは êtreの現在形の活用をやってみましょう。

英語でいえばI am、you are、he is、she is、it isを学びましょう

 最初は、je suis (ジュ・スュイ)。

 なんで être の活用なのに、ぜんぜん形の違う suis になるのだ? と怒ったあなた。あなたのいい分はもっともです。しかし、être は「不定詞」なのです。英語では「原形」というのが普通ですが、文法用語では英語でも「不定詞」といいます。要するに、動詞の、辞書に出ている、活用しない形のことで、フランス語では、動詞の不定詞と活用形とがまったく違っていることがあるのです。

 とくに、頻繁に用いる、英語で be 動詞に当たる être、have 動詞に当たる avoir、go に当たる aller は、不定詞と活用形がかなり違っているケースが多いのです。そういうものなのだ、とちょっと心を落ち着けて、それらの活用形におつきあいください。

(写真:iStock.com/JackF)


 さて、je suis (ジュ・スュイ)に戻ります。

 この発音は規則どおりでいいのですが、suis は「シュイ」ではなく、「スュイ」。つまり、第1章で merci(ありがとう)の発音を説明したとき、「ci『スィ』は『シ』ではありません。英語でいえば、see[siː]と she[ʃiː]の違いです。この ci の発音は、see の s の音にi が付いたものです」と説明しましたが、その場合と同じように、suis の発音も「スュイ」であって、shuis(シュイ)ではないのです。

 さて、je は「私は」を意味するいちばん基本的な代名詞です。というわけで、je suis の意味は「私は~である」ということになります。

 

 続いて tu es (テュ・エ)。意味は「君は~である」。

 次の3人称単数が、英語とはちょっと違っています。

 英語では、主語となる代名詞が、男性(he)と女性(she)と物(it)によって変わりますが、フランス語の3人称単数の主語となる代名詞は、人間の男性と男性名詞を受ける il (イル)と、人間の女性と女性名詞を受ける elle (エル)の2つになります。

 être の活用形は、il の場合も elle の場合もest で、この est の発音は、第1章でやったように、語尾の子音の s と t を両方とも読まないので、「エ」という発音になります。

 つまり、il est が、「彼は~である」あるいは「それ(男性名詞)は~である」の意味で、elle est が「彼女は~である」「それ(女性名詞)は~である」ということになります。そして、このとき、発音に注意が必要です。

 というのは、「イル・エ」という発音はくっついて「イレ」となり、「エル・エ」という発音もくっついて「エレ」になるからです。

(写真:iStock.com/HotPhotoPie)


 このように、前の単語の子音とあとの単語の母音がくっついてしまう現象が起こることが多く、これを「アンシェヌマン」と呼んでいます。「アンシェヌマン」とは「つながり」という意味で、前の単語の子音とあとの単語の母音が「つながって」発音されてしまうことを指しています。

 第2章で「リエゾン」に触れました。リエゾンとは、「発音されないはずの子音があとの母音とくっついて発音されてしまうこと」でした。

 このリエゾンの場合、本来発音されないはずの子音が、あとに来る母音にひっぱられて発音されてしまうのにたいして、アンシェヌマンの場合は、もともと発音されている子音が、あとの母音とくっつくだけなので、リエゾンとアンシェヌマンはまったく違う現象です。

 それはともかく、そんなに神経質になることはありません。出てくるたびに注意するので安心してください。そのうち慣れてきます。

次は複数形。英語でいえばwe are、you are、they are

 さて、話を 基本的な動詞の être (エトゥル)に戻します。

 次は、1人称複数ですね。これは nous sommes (ヌ・ソム)となり、「私たちは~である」の意味。

(写真:iStock.com/sylv1rob1)


 2人称複数は vous êtes で、代名詞は「ヴ」、être の活用形は「エトゥ」と発音しますが、この2つがつながると、「ヴ・ゼトゥ」となります。本来発音しない s があとの母音とくっついて発音されるので、これは「リエゾン」ですね。しかも、vous の s は母音に挟まれているので、z の音になり、「ゼトゥ」という発音になったわけです。意味は、「君たちは~である」。

 ところで、このvousには注意が必要です。というのは、フランス語には、「君は~である」の意味を表す tu esにたいして、「あなたは~である」の意味を表す敬語的な表現があって、このとき主語にvousを使ってvous êtes (ヴ・ゼトゥ)「あなたは~である」というからです。つまり、vousには「君たちは」という2人称複数の意味と、「あなたは」という丁寧な2人称単数の意味があるのです。さらにvousは、「あなたがたは」という丁寧な2人称複数の意味もあります。要するに、vousひとつで「君たちは」「あなたは」「あなたがたは」という3つの意味を表すことができるのです。その意味の違いは文脈で区別できるので、混乱することはありません。どうか安心してください。英語のyouだって単数・複数の区別なく使われているのですから。

 

 最後の3人称複数の主語の代名詞と êtreの活用形の組みあわせは、ils sont (イル・ソン)とelles sont(エル・ソン)になります。

 前者が「彼らは~である」あるいは「それら(男性名詞複数)は~である」、そして、後者が「彼女たちは~である」あるいは「それら(女性名詞複数)は~である」という意味になります。

(写真:iStock.com/Jean-philippe WALLET)


 それから、ここまで主語は代名詞だけでやってきました。しかし、普通の主語は、無数の名詞や固有名詞を含んでいます。それらの名詞に対応する動詞の活用形は、単数の名詞が主語ならば、3人称単数の est になり、複数の名詞が主語ならば、3人称複数の sont になります。

 つまり、ジャン Jeanという男の人を主語にして、「ジャンは~である」といいたいときには Jean est (ジャン・エ) ~ となりますし、3つのテーブルがあって、「それら3つのテーブルが~である」といいたいときには les trois tables sont (レ・トゥルワ・タブル・ソン) ~ となるわけです。

 

 さて、人称ごとの être の活用形を以下にまとめて表にしておきますので、憶えてください。

 とはいっても、「君は~だ」とか「君たちは~です」といったフランス語を使う機会などたいていの日本人にはありません。観光客としてパリに行ったとしても、フランス人相手に tu es (テュ・エ) ~ とか vous êtes (ヴ・ゼトゥ) ~ といって会話することなど、まずありえないでしょう。

 ですから、とりあえず、フランス語には主語となる人称が6つあって、動詞はそれぞれに対応する活用形があるのだという事実を忘れないでください。そのために、être の例を頭に入れておくと便利なのです。なに、忘れたら、またここを見て復習すればいいのです。気楽に行きましょう。というわけで、動詞 être の活用形はこうなります。

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