薄々、いや、はっきりバレていると思いますが、私の生活の中で一番大事なものは“食”でございます。群を抜いて“食”。「何か妥協したモノを食べている時に隕石が落ちてきて死んだら後悔する」というリアリティのない架空の話を、どこかでホントにそう思っていて。出来うる限り“美味しいもの”を食べたいんです。だからいつも“次の食事”の事を考えておりまして。「次の仕事の間は時間ないから、あのコンビニのあのサンドイッチを買っておこう」とか「新幹線が○時に品川に着くから、駅のお惣菜屋さんで夜の晩酌用のおつまみ買おう」とか。

 もちろん朝食だって手を抜きません。一日の始まりですからね。しかも朝昼兼用でいただく事も多いので、かなりしっかり食べるんです。カレー、パスタ、定食などなど。一日のエネルギーを溜め込むかのようにモリモリいただきます。そんな中、自分でも本当にお腹がすいているのか、それとも寝不足で胃袋が変なのかよくわからないけど摂取する、“早朝のガッツリ朝食”たるものがございます。例えば4月から土曜の朝7時から文化放送「ラジオのあさこ」という番組をさせていただいておりまして。朝はだいたい5時前には起きて文化放送へ。途中、コンビニに寄るのですが、こないだは汁なし辛口担々麺と大きめの餃子が3個も入っているスープをチョイス。6時前とは思えぬハードメニュー。スタッフさんのどよめきも気にせずガツガツ食しましたところ、本番前“ポンポン痛い痛い状態”に。単に辛いものでお腹を壊したのか、47歳の胃袋からの「やめてくれ」のサインなのかは定かではありませんが。それでも懲りずに食べる私。もう“妖怪大食いババア”と呼んで下さい。
そんな“目覚めの食”で先日事件が。その日は地方ロケの為、早朝空港へ。お店もほとんどやっていない中、朝から開いているおそば屋さんによく立ち寄ります。そこはちゃんとおそばも茹でたて、天ぷらなども揚げたてをいただけるので、他よりちょいとだけ高めではありますが、美味しいのでよく行くんです。

 その日も4時半起きだった私は、相変わらず本当にお腹すいているのか、胃腸の麻痺なのかは不明ですがお腹はちゃんとグーグー鳴っておりまして。なので相も変わらずガッツリ系のかき揚げそばを注文。ちょいと厚めのかき揚げをおそばの上に乗せる。その途端、出汁のきいたおつゆにサーッとかき揚げの油が広がる。最初茹でたてのおそばをすすったら、サクサクの状態のかき揚げにかぶりつく。だんだん崩れてきて、最後おつゆを吸ってヘナヘナになったタマネギも最高。想像しただけで興奮しちゃうぜ。そんな大好きなかき揚げそばを頼んだんです。会計を済ますと「出来上がりましたらお呼びします」と番号の書いてあるブザーを渡される。新聞を読むこと数分。ブーッ、ブーッ、ブーッと強めのバイブと共にブザーが鳴る。カウンターに取りに行くと、私は一瞬止まりました。あれ? かき揚げが、乗ってない。ただおつゆに浸かったおそば・かけそばが出てきたんです。「あの、すいません。私、かき揚げそば頼んだんですけど」と言うとそのお姉さん。伝票を見ながら「かけそばになってます。」……ん? なってます? いやいや。券売機で私がかけそばのチケットを買ったんだったら「かけそばに“なってます”」でいいですよ。でもこっちはかき揚げそばと言ったのをそちらがレジ打ち間違えたわけですから“なってます”はおかし……まあ、まあ。落ち着け、私。朝ですし。私の滑舌も悪くて“かき揚げそば”が“かけそば”に聞こえちゃったのかな。だとしたらこっちも悪い。「すいません。かき揚げそばいただきたいのですが」と再度言うと、ぶっきらぼうに手を出して「かき揚げ300円です」まあ、まあ。きっとこのお姉さん、夕べ彼と別れたのかも。だったらこのぶっきらぼうも仕方ない。300円を払う。するとそのかけそばの乗ったトレーを私の方に改めてスッと出した。「えっと……」と戸惑っていると「かき揚げ出来たらお持ちしますので、先にそば食べててください」え? 先に? 先におそば、だけを? あれ? 私が食べたいのはかき揚げそばでござんすよ?「えっと。すいません。私かき揚げそばを……」と言いかけるとお姉さんが一言。「あ、かき揚げとご一緒がよろしかったですかぁ?」ドッカーン。あさこの“イライラ火山”爆発です。そりゃあご一緒がよろしいですよ。だってかき揚げとおそばのハーモニーを楽しみたいんですもの。じゃあお姉さん。もし私がカツ丼頼んだのに玉子丼が出てきて「カツが出来たらお持ちしますので先に玉子丼食べててください」って言う? カフェオレ頼んだのにコーヒーが出てきて「ミルク絞ったらお持ちしますので先にコーヒー飲んでてください」って言う? アメリカンドッグ頼んだのにフランクフル……あらやだ、私ったら。取り乱しまして失礼いたしました。結局そのやりとりを見ていたベテランおじさまが新たなるかき揚げそばを作ってくださったのですが、飛行機の時間がギリギリになって半分くらいしか食べられず。無念。

 それにしても落ち着いて思い返すと、47歳がかき揚げそば求めて早朝に食い下がる姿はお恥ずかしい限り。って言うか、私。食べなくても十分にエネルギーありますね。オホホ。さ、明日の朝は何食べよ。セブンイレブンのチーズダッカルビ弁当とかいっちゃおうかしら。ゴクリ。

【今日の乾杯】
たこぶつ。先日岡山ロケで朝早くからの撮影だった為、前日の夜から倉敷へ。フラッと入った居酒屋さんにて名物のたこをば。岡山の地酒もたくさんあって、あっという間に岡山大好き人間の出来上がり。

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いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。』

寂しいだか、楽しいだか、よくわからないけど、日々、一生懸命生きてます。人気芸人の、笑って、共感して、思わず沁みるエッセイ集。全力で働いて、遊んで、呑んで、笑って、泣いて……の日々。ぎっくり腰で一人倒れていた寒くて痛い夜。いつの間にか母と同じ飲み方の「日本酒ロック」。緊張の、海外ロケでの一人トランジット。酔ってヒールでこけて両膝から出血の地獄絵図。全力の悪ふざけ、毎年恒例お誕生会ライブ。女性芸人仲間の感動的な出産。“呑兵衛一族”の冠婚葬祭での豪快な呑みっぷり。40歳で体重計を捨ててから止まらない“わがままボディ”。大泣きのサザン復活ライブ。22歳から10年住んだアパートの大家さんを訪問。20年ぶりに新調した喪服で出席したお葬式。恒例の、オアシズ大久保さんのご家族との旅行。etc.