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 最近は忙しくなりその回数は減りましたが、以前より暇が出来るとよく他の書店に行き、本を一冊買って帰りました。書店チェーンに勤めていたころ、先輩のHさんが「他の書店で本を買わない奴は駄目だ」とよく断言していましたが、その教えが身に染みついているのかもしれません。

 行く書店に、こだわりはありません。ショッピングセンター内の大型書店、国道沿いの複合型書店、雑誌でよく見かける個人経営の本屋など、大体どこの店でも面白いところの一つや二つは、すぐに見つかります。

 はじめていく店では、入ってすぐ目のつくところに、何を並べているかを確認します。その場所に並べている本は、その店が大切にしている本であることが多いので、そこを見ることでどんな店かがわかります。また、長く営業している店では、お客さんの嗜好が次第に店の本に反映されてくるので、「ああ、ここは年配の人が多いんだな」など、その店の日常が伝わってきます。

 店の奥に入りましょう。その内容や著者別など、ある意識を持って本が並べられている店の本棚は、見ていて気持ちがよいものです。知らなかった出版社の本が棚にあるのを発見し、自分の店に在庫がない話題の本が、目立つように置かれているのは悔しいことです。しかし同時に、書店の仕事をしている人の確かな存在がそこに感じられて、嬉しくもなります。そのような店で一冊買って帰るのは、「見せて頂きました」という気持ちからですが、まれに「何も見せてもらえなかった」という場合もあり、そんな時は何となく店を出てしまうこともあります……。

 どんな仕事でもそうだと思いますが、その人の仕事には、その人のそれまでの経験が現れます。その経験には、その人がおこなったことはもちろん、その人が見てきたことも含まれます。店をたくさん見ることは、その人の仕事のストックを増やすことであり、ふとした時に「あそこの店はこうディスプレイしていたな」と、自分の仕事にかえってくるものです。

 ちなみに、Hさんに発言の真意を聞いたことはありません。色んなことを含めての「駄目だ」なのだろうと、思っています。

 

 今回のおすすめ本

 内田洋子『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語』(方丈社)

 本屋の起こりは、本を担ぎ、それを求める人のところまで持っていくという行商から始まった。食べものと同じように、本は切実に求められる〈必需品〉でもある。

 

 

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お知らせ

 

◯2018年4月10日(火)〜4月24日(火)12:00 〜   Title2階ギャラリー

言葉をなくしたように生きる人達へ

言葉をなくしたように暮らしてみたら、見つかった言葉があった。イラスト作家 安達茉莉子による「言葉」にまつわる物語。*原画やイラスト詩集、オリジナルトートバッグやポストカードなども販売


◯2018年4月25日(水)20:00〜 本屋B&B(世田谷区北沢2-5-2 ビッグベンB1F)

辻山良雄×花田菜々子×内沼晋太郎
「忘れられない本屋の話をしよう」

『この星の忘れられない本屋の話』(ポプラ社)刊行記念

イーユン・リーや、フアン・ガブリエル・バスケスなど、世界の注目作家15人が、ワシントンDC、ベルリン、ナイロビ、イスタンブールまで、書店の魅力と書店との紐帯を明かしたアンソロジー『この星の忘れられない本屋の話』。この本の刊行を記念して、現役の書店員がクロストーク。


◯2018年4月27日(金)〜 4月29日(日)

第3回 「家族製本」展示会のお知らせ
宮本恵理子+キッチンミノル 取材体験でつくる、家族のための時間。

「家族製本」は、オーダーメイドの本づくりプロジェクト。家族のためだけの、世界で1冊の本をつくります。

 


『365日のほん』辻山良雄(河出書房新社)

春、夏、秋、冬……過ぎゆく毎日に1冊の本を。Titleの店主が紹介する、スタンダードな本365冊。どこでも、どこからでも楽しめる、完全書きおろし。

 

 


『本屋、はじめました―新刊書店Title開業の記録』辻山良雄(苦楽堂)

<5刷!ロングセラー>
「自分の店」をはじめるときに、大切なことはなんだろう? 物件探し、店舗デザイン、カフェのメニュー、イベント、ウェブ、そして「棚づくり」の実際。事業計画書から、開店後の結果まですべて掲載。堀部篤史さん(誠光社店主)との特別対談を収録。