誰かと会って話がしたい。そうだ、“デート”をしよう!

 というわけで、さっそく気になる男性にデートのお誘いをしてみました。

 お相手はダンサーの加藤律さん。

 加藤さんはうちのご近所さんということで、朝の9時半から一緒に近所を散歩するというモーニングデートを決行しました。

加藤律さん

ひとり暮らしにSNSは必要

ペ「今日は朝早くにありがとうございます。どういうシチュエーションでデートしようか悩んだんですけど、せっかくご近所だし、朝からさわやかにっていうのもいいかなと思って」

加「いいですよね、朝も」

ペ「加藤さんが毎朝家のベランダからの風景を撮ってTwitterにアップしてるじゃないですか。あれいいなあ、と思って。あれはいつから始めたんですか?」

加「去年の4月23日ですね」

ペ「お、日付までちゃんと覚えてるんですね」

加「なんか自分の中のルーティーンが欲しいと思って」

ペ「朝にルーティンが欲しいっていうのわかります。ひとり暮らしだとルーティーンを自分で決めないと何もないから、ダラダラしちゃう」

加「朝起きて真っ先に顔洗う。とかでもいいんでしょうけど。そこは、アップしたいんでしょうね」
ペ「ははは。私も毎朝、猫の写真をアップしてます」

加「目指せ4時起き!ですね」

ペ「全然4時起きできてないじゃん!ってみんなに突っ込まれてます。加藤さんはいつも何時に起きてるんですか?」

加「仕事がある日は6時半起きですね。9時から仕事で。夕方に終わって買い物行って、KATO’Sキッチンという流れです」

ペ「私、KATO’Sキッチンのファンなんですよ」

加藤さんがTwitterでアップしている手料理、その名も“KATO'Sキッチン”


ペ「KATO’Sキッチンを始めたきっかけは?」

加「最初は単純に節約の為に自炊しようと思って。ちょうどMOCO’Sキッチンが始まった頃だったんすよね。友達が、“もこみちがMOCO’Sキッチンだったら加藤くんはKATO’Sキッチンだね”って言い出して。それで何か反応が欲しかったのかな、SNSにアップし出して。そしたら、“自分が食べたものとかを執拗にSNSにアップする人は何かしら心に障害を持っている”っていう記事を知り合いがFacebookでシェアしたんですよ。そういうの読んじゃったら、ここでアップしないのは負けだ!と思って逆に執拗にアップするようになりました(笑)その知り合いは僕がKATO’Sキッチンやってるの知ってるはずなのになぜその記事をシェアしたのかは謎ですけど(笑)」

ペ「それはモヤりますね(笑)ちょうど加藤さんがこっちに引っ越してきた時に、商店街でばったり会ったんですよね。それから加藤さんのTwitterをチェックするようになって、KATO’Sキッチンの投稿を見て。ああ、あの時この買い物をしてたのか、って親近感を持って」

加「SNSで何かしら反応があると、やっぱり単純に嬉しいですね」

ペ「SNSがない時代のひとり暮らしってもはや想像できないですよね。SNSやってると、今日こういうことあったよっていうのを誰かに話しかけているっていうのを疑似体験できるとこがあるじゃないですか」

加「そうそう。みんなの動きも見れるから。なんか動いている感じが見えるってのが」

ペ「ひとり暮らしで、自分だけに向き合っていると、他の人が毎日いつ起きていつご飯食べていつ寝てっていう動きを見ると安心するというか。それでついつい見ちゃうんですよね。人の生活を感じたいというか」

加「僕が撮る写真には人が写っていないんですよ」

ペ「そういえば風景やお料理の写真はアップしてるけど、人と写った写真は見かけないですよね」

加「そうなんですよ。人を撮れないんですよ。人とのコミュニケーションが苦手で」

ペ「それはいつからなんですか」

加「昔ほんとちっちゃい頃とかは人が好きだったらしいんですよ。人前でふざけたりも。人見知りになったのはいつからなんだろう?思春期以降ですかね」

ペ「男女問わず?」

加「女子に対しては特に。3兄弟の次男で、高校が男子校なんですよ。大学に入って1人も友達できなくて毎日辞めたい辞めたいと思ってて2年になってなぜか演劇部に入って、それでやっと友達ができて」

ペ「私が最初に加藤さんと知り合ったのは5年前の2013年に演出をやった『撫で撫で』という公演で振付をやっていただいた時ですよね。役者ではなくダンサーになった理由は?」

加「演劇部の先輩が地元のモダンダンススクールに通っていて、そこの先生が作品を作りたいと。でも田舎のダンススクールだからおばちゃんしかいなくて作品を作るに当たって男がほしいということで演劇部から男子が何人か借り出されて。そっからダンスにはまりました。すごく楽しかったんです、身体で表現することが。そっちのほうが楽だなと思って。演劇をやればやる程、言葉のやりとりが苦手だなと思ってたんで」

ペ「身体だけで表現するほうがしっくり来たんですね」

ファミレスでモーニング。なかなか目を合わせてくれないシャイな加藤さん。

ペ「笑。ちなみにデートするのはいつぶりですか?」

加「女子と2人でご飯を食べに行くのをデートとするなら、半年ぶりくらいですかね。年に2回くらいなんで」

ペ「その2回はどういうきっかけでするんですか?」

加「僕が頑張って誘うってことが多いです」

ペ「それは何かしらの下心があって?」

加「もちろん。そういう気持ちがある人に対して、ぐーんって頑張って。でも頑張れるのは半年に1回」

ペ「逆にその半年に1回の頑張りってえらいですね」

加「付き合いたいとかいう欲はあるんですよね、やっぱ」

ペ「それでデートはその後継続するんですか?」

加「しないんですよね、継続は。誘っただけで満足しちゃうんですよ。ああ、やった!っていう。何もやってねーよ!って話ですけど。その1回で半年分使い果たすっていうか」

ペ「じゃ2回目は誘わないんですか」

加「そうですね」

ペ「あらら…」

加「相手に興味ないわけではないんですけど、何を聞けばいいんだろうって、好きな人と会っても何を話していいかわからないみたいなことになるから、会ってもしょうがないなって」

ペ「会ってもしょうがないって(笑)もったいないですよね。話すことない=自分に興味がない、って相手は思っちゃいますよね」

加「いろいろ考え過ぎちゃうんですよね。それで後になって反省するんですよ。あの時こういうふうに言っていたらこういう会話ができたな、とか。会話の練習とかしてますもん家で」

ペ「ひとりで?」

加「はい」

ペ「ひとりでできますか?会話の練習」

加「相手がこう返すっていうのを含めて自分でひとり二役やって。しかも人と会う前じゃなくて会った後に後悔してからやるってのが問題なんですけど」

ペ「笑。でも少しわかるかも。私も人と会った後に、ああすればよかったって後悔することはあるから。自分が考えすぎることにめんどくさくなりませんか?」

加「なりますね」

ペ「好きな人を誘うとなると、もしかしたらあーかもこーかもって考えすぎて、実際会った時に空回りしちゃうし、そんなことでいっぱいいっぱいになるのはイヤだと思っちゃう。結局人が面倒くさいというというより、人と対峙した時に考えすぎる自分が面倒くさい」

加「自分が傷つきたくないっていうのがあるから、好きになっちゃあかんでー、ってのは常にありますね」

ペ「傷ついたれー!みたいな気持ちになることはないんですか」

加「ないなー」

ペ「(笑)」

誰かと生活したい気持ち

ペ「私は、元々さみしがりやだから、上京したての大学生の頃はひとり暮らしが寂しすぎて1年と経たないうちに彼氏と半同棲状態になってしまったんですよ。それで付き合っている人もいなくて本格的にひとり暮らしというのは30歳過ぎてからなんですけど、最初の頃はつらすぎて毎日泣いていたけど、ひとりでも寂しくないようにひとりの生活を充実させようって頑張ったら、全然ひとりが楽しくなってきちゃって。このままでいいのか?ってのはありますね」

加「そういう経験を経てのひとりってのも羨ましいですけどね」

ペ「ま、昔の話です!(笑)人とずっと一緒にいると思考が停止するなっていうのはあって。寂しさを感じないから、自分に立ち戻ることがないというか。ひとりだといろいろ考えるじゃないですか」

加「それはわかる気がする」

ペ「でも、バランスが難しいですよね。ひとりでいすぎても自分と向き合いすぎて自家中毒起こすっていうか」

加「(笑)」

ペ「人と生活してみたいって気持ちはあります?」

加「うーん……ありますけど、なんとなく。うーん…なんか現実味がないというか、ディズニーシー行きたいなくらいの感覚ですかね。人と付き合うこと自体も、空飛びたいな、くらいの感覚ですから」

ペ「それってかなりハードル高いじゃないですか」

加「こんなに確立されちゃってるひとりの暮らしは…家に帰ったらご飯作って晩酌してっていう、それがあまりに長く続いちゃうと、他の生活が考えられないというか」

ペ「楽しみすぎちゃってる」

加「楽しみすぎてるっていうより、満足しちゃってるってことですかね。満足しちゃいかんなーとは思うんですけど。満足したら終わりみたいな感じしちゃうから」

ペ「ひとりの生活を確立できて楽しめてるのは素敵ですけどね」

 “孤独”の楽しみ方

ペ「孤独を感じることはありますか?」

加「部屋でひとりでいる時よりは外にいる時のほうが感じやすいですね。喫茶店でひとりで珈琲飲んでる時とか。人間の調子って夕方くらいにグラグラするっていうのがあると思うんで、その辺の16時とか17時くらいに、あー今日もひとりで飯作って酒飲むのか、誰かに会いたい!って。でも男友達を誘うことすらできないから」

ペ「どうして?」

加「申し訳ないなって思っちゃうんですよね。僕なんかの為に時間を使わせるのは。それで家帰ってKATO’Sキッチンが始まっちゃうと孤独は感じなくなるんですけど。もうKATO’Sキッチンが始まったら一日終わっちゃいますから」

ペ「私も毎日自炊していた時期はあるんですけど、食べてくれる人がいないと自分だけのために毎日頑張って作れないなと思ってなかなか続かない」

加「もちろん自分の作った料理を人に食べてもらって美味しいって言ってもらえるのは嬉しいですけど、自分で食べて美味しいっていうのでも幸福感が得られるんですよね。それで恋愛欲も解消できちゃう」

ペ「え、人に食べさせなくても?」

加「はい」

ペ「それって自給自足っぽいですね」

加「KATO’Sキッチンに依存してるってとこはありますね」

ペ「そこに依存できるんだ(笑)それ全然人は関わってないじゃないですか」

加「そうそう、人に依存するっていうよりは行為に依存するっていう。KATO’Sキッチンという行為への依存です。人に依存しちゃうと相手への迷惑のこととか考えちゃうから。だから写真とかも風景画ばかり撮っちゃうんですよね」

ペ「そこに表れてたんですね」

加「ペヤンヌさんは寂しいと思った時はどうしますか?人に会う?」

ペ「そうですね、人に会う。か、猫に依存しますね」

加「そうですか。自分は人を誘えないってところが困ったところだなと思います。結局誰にも気を遣わなくていいひとりの行為が楽だし満足できるっていう」

ペ「ひとり上手すぎるっていう」

加「そうなんですよね。だから好きな人ができたとしても付き合ってもいないのに先の事をいろいろ考えて結局うまくいかないなって、それで安心しちゃうというか、傷つかなくてすむっていうか」

ペ「やっぱり傷つきたくないっていうのが大きいんですね」

このまま50歳、60歳を迎える不安

加「昨日うちのアパートの下の階に住んでいる独り身のおじいちゃんが、庭で穴を掘ってたんですよ。上セーターで下パンツ一丁で、それが女性ものの下着だったんですよ。それを見てこれもしかしたら将来の自分じゃないかなーって思っちゃうんですよね。そうなっちゃったらどうしよう、という不安みたいなものはありますけど」

ペ「それはかなりインパクトのある風景ですね(笑)なったらなったでいいやーってのはあります?」

加「うーん5%くらいはありますけど。あとは今の生活変えたいなー、変えたい?(自問)そうはなりたくないなあ、っては思うけど今の生活変えたいかっていたら、今はまだ…ってなって」

ペ「今のひとりの生活が充実しすぎてるから…」

加「でも、50歳、60歳になってこの生活がいいかっていうと…いやーってなるけど、今すぐ変えたいかというと…じゃ、いつ変えるの?って言われたら、いやいやーって。50、60になっても言ってそうだなー。その問題を先延ばしにしちゃってる感じはありますよね」

ペ「(笑)別に加藤さんの生活を変えようっていう会じゃないですからね、これ。
私はSNSを通して加藤さんがひとりの生活を楽しんでいる感じがとてもいいなあって思って。自分も楽しもうって気持ちにさせてもらえるというか励みになってるんですけど」

加「時々こうやって人と会って話すと、自分の生活を客観的に見ることができて、変えなきゃとか思ったりしますね」

ペ「幸福ってなんだろう、って最近考えるんですけど。その時々に幸せを感じながら過ごせてたらそれでいいじゃんとも思うし」

加「今僕にとっての幸せは自分で作ったご飯が美味しい、ってことですよね。でも今はKATO’Sキッチンで幸福感を得られているけど、それが50、60になった時に同じ幸福感を得られているのか?って思うと謎ですけどね」

ぺ「そこが今ちょっとだけ不安を感じるところなんですよね、きっと。ひとりの場合。家族を作っている人は、これから先このままでも幸せを感じるだろうか?って思う人は少ないというか」

加「そうですよね。年を重ねるにつれ、KATO’Sキッチンでも幸福を感じなくなったとしたら、自分から能動的に何か新しいことを始めるんですかね」

ペ「そうですよね。そこはたぶん人間って都合よくできてるから、本当に堪えれないってなったら何かアクションを起こすと思う」

加「それが僕の場合、人に行くのではなく…」

ペ「また別のひとりでできるものに行きそう……盆栽とか!」

加「そうそう!」

(後編へ続く)


加藤さんが出演するパフォーマンス公演『エントロピーの楽園』が4月28、29日に横浜赤レンガ倉庫であるそうです。デートした人が輝いている姿を見ると、ドキドキしそうですね。


加藤律(かとう・ただし)
大学から演劇とダンスを始める。卒業後は主にダンスの舞台に出演。
その他、演劇や映像作品への振付や出演も行う。
KATO'Sキッチン(@makkoritsu)主宰。基本、作るのも食べるのも自分のみ。

<次回出演>
ANTIBODIES Collective
「エントロピーの楽園」
http://antibo.org/?cs_preview=true

この記事をシェア
この連載のすべての記事を見る

★がついた記事は無料会員限定

ペヤンヌマキ『女の数だけ武器がある』

ブス、地味、存在感がない、女が怖いetc.……。コンプレックスだらけの自分を救ってくれたのは、アダルトビデオの世界だった。働き始めたエロの現場には、地味な女が好きな男もいれば、貧乳に興奮する男もいて、好みはみなバラバラ。弱点は武器にもなるのだ。生きづらい女の道をポジティブに乗り切れ! 全女性必読のコンプレックス克服記。