卒業式の当日
式が始まる前の教室
あの娘は人気者グループの中で
明るく元気にはしゃいでいる
窓から溢れる光が
その笑顔に降り注いで
天使のように綺麗だ
僕はといえば教室の前のほう
2軍の定位置に冴えない仲間たちと集まり
はしゃぐ1軍に負けないように
しかし目立ちすぎないように
2軍なりに盛り上がろうとしている


僕には秘密がある
昨日あの娘に言ったんだ
伝えたいことがあるから
式が終わったあと時間をくれないかって
あの娘は一瞬驚いた顔を見せて
それから優しい笑顔でこう言った
いいよって


思いを伝えよう
身分違いの恋だけどこんなにも好きなことを
これで最後になるだろうから
後悔しないように
とびっきりロマンチックなやり方で
式が終わったらすぐ花屋に行って
そう、バラを買いに行くんだ


童貞がバラの花束を持って立っている
まぶしい日差しの中
誰もいない渡り廊下で
 

勇気を出して
今日だけ眉毛を細く整えた
前髪だけだけど
整髪料もつけてみた
コンビニで買った香水を
手首に少しかけてみた
後悔しないように
最後に一番の自分を見せられるように
 

童貞がバラの花束を持って立っている
まぶしい日差しの中
誰もいない渡り廊下で
 

溢れる光が
花束を
学ランを
セーラー服を
校舎のコンクリートを
だだっぴろいグラウンドを
白く照らして
足りないものも
余計なものも
何もない世界
 

忘れることができない

この記事をシェア
この連載のすべての記事を見る

★がついた記事は無料会員限定