春の那覇は、もう夏の日射しだった。

 三泊四日のひとり旅。予約していた繁華街のホテルの窓をあけると壁しか見えなかったけれども、まったく問題なし。朝食が付かないプランなので、昼前にゆっくり起床。ぶらぶらと散歩しつつカフェに向かう。

 朝昼兼用のごはんを食べたあとは、映画館へ。旅の間、三本の映画を観た。ようするに、一日一本ということになる。

 三本とも、おもしろかった、というほどではなかった。が、だから観なければよかった、とも思わない。全体としてはおもしろくなかったとしても、ひとつふたつ好きなシーンはあるものである。

 映画を見て、散歩して、本を読んで、お茶して、ごはんを食べて。

 東京での休日となんら変わらないけれど、散歩の景色が違うだけで、十分に「旅」なのだった。

 夜はベッドに寝転んで読書。今回は、原稿のための資料本が9割。あとの一割はお楽しみの小説。小説は、津村記久子さんの『ポースケ』。楽しすぎてちょびちょび読む。

「頭が邪魔だと思う。」

 のところは、何度も読み返した。次にすすむのがもったいない瞬間が、津村さんの作品には何度もある。なにせ「頭が邪魔だと思う。」である。この後の文章へのハンパない期待感!

「人間はどうして、今起っていないことに苦しんだりするんだろうか。」

 と、きて、またまたもったいなくて小休止。

「今がなんとか安全なら、なぜそれでいいと割り切れないのだろう。できれば、仕事の間は頭を切り落として、首から下だけで生活したい、と佳枝は思う。」

「佳枝は思う。」からの三行に思わずハハハと声を出して笑い、これ以上はもったいないからまた明日。そんな感じの読み方である。

 東京に戻る日がやってきた。もっと那覇の街をぶらぶらしていたかった……と思いつつ、帰ったら何たべようかなぁ、近所の蕎麦屋で冷たい蕎麦もいいなぁ、などと並行して考えていたのであった。

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