エンゼルスの大谷翔平投手が、米大リーグの開幕戦で指名打者として初ヒットを打った。

 私はかねてより日本プロ野球の有能な人材が流出するポスティングシステムに反対してきたが、大谷がメジャーに昇格した以上、ぜひ成功してもらいたい。

 大谷は背も高く、足も速くて肩もいい。日本人としては珍しく三拍子そろった逸材だけに、メジャーで通用しなかったら困るのだ。もし大谷が通用しなかったら、やはりメジャーのレベルがそれだけ高いことになる。

 しかし私は、日本のスポーツ紙が大はしゃぎするほど大谷の前途を楽観することはできない。大谷はポスティングシステムのルールでマイナー契約だから、スプリングキャンプでは招待選手としてメジャー選手と一緒に練習した。この間、紅白試合や練習試合を経て他球団とのオープン戦にも二刀流で出場したが、成績は投打ともよくなかった。

 

投げても打っても絶不調

 オープン戦では投手として2試合に登板し、2回2/3、0勝1敗、自責点8、防御率27。オープン戦の登板は2試合だけだが、このほか2度の練習試合でも打ち込まれた。
 
 さらに3月25日(日本時間)に特別ルールで行われた紅白戦では、4回2/3を投げて2安打5奪三振2失点だったが、6四死球の乱調。

 この日は大谷にとって実戦5戦目で、開幕前最後の調整登板だった。

 報道によると、これまで4度の登板でフォークの制球に苦しんだ大谷は、「今日はスプリット(フォーク)を中心に投げようと思ったので、序盤から多めに投げられてよかったかなと思います」と語った。

 渡米後最多の85球を投げ、最速154km/hを記録したが、フォークの数は過去4戦の合計を上回る24球。四球連発はフォーク練習の結果だったのだろう。

 それだけ、滑りやすいといわれるメジャーのボールにまだ慣れていない証拠でもある。一方、オープン戦の打撃成績も11試合32打数4安打、打率.125、本塁打0だった。

 25日で約1か月半にわたるアリゾナキャンプを打ち上げた大谷は、「よかったこと、悪かったこと、できたこと、できなかったこと、いろいろありましたけど、一日一日全部がいい経験になったと思っています。もちろん初めのほうはどういうふうに進んでいくのかわからないまま進んでいく部分はありましたけど、その中でもうまく回してもらったと思っています。順調にできたかなと思っています」と総括した。

 不調でも弱気を見せず、悪びれずに前向きな発言をするのが大谷のいいところだ。多国籍の天才集団の中では、こうでなければ生き抜けない。

 しかし冷静に見れば、大谷が未調整のままメジャー開幕を迎えた現実は否定できない。

 メジャーの投手たちは、短いキャンプでしっかり仕上げて本番を迎える。たとえば7年目をカブスで迎えたダルビッシュ有投手は、22日(日本時間)の古巣レンジャーズ戦で6回を投げて3安打1失点、7三振で3勝目を挙げている。

 

メジャー抜擢は大谷の経済効果

 しかし大谷は、投打とも未調整のまま25人枠のメジャーに昇格し、4月2日の開幕第4戦・アスレチックス戦でデビュー登板することも決まった。

 大谷の第4戦デビューを決めたソーシア監督は、「多くの人は打率や失点ばかりを見ている。われわれは過程を見ていて、それが重要だ。彼は準備ができているという自信がある」と語った。

 だが、非情で言い訳のきかない大リーグで、調整不足の大谷がメジャーに残れたのは、約22億円の譲渡金を投資したポスティング選手であると同時に、日本のスーパースター・大谷についてくる日米のスポンサーとグッズ収入など、巨額の経済効果が決め手になったのは間違いない。

 

大谷には成功してもらわなければ困る

 大谷は、キャンプとオープン戦の成績が悪かったぶん、勉強する材料はたくさんもらっているはずだ。開幕しても「悪いところはこれ、いいところはこれ」と腰を据えて修正してもらいたい。

 そして死に物狂いで頑張らない限り、メジャーでは生き残れないだろう。大谷はいいものを持っているのだから、日本の野球のためにも生き残ってもらわなければ困る。

 そのためには、まず一つをものにすることだ。二刀流をめざすより、本業の投手としてメジャーに通用する力をつけろ。大リーグは、そんなに甘い世界ではない。

 

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