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子供がずっと欲しかった

2020.04.28 公開 ツイート

花田菜々子様へ「誰かといっしょに生きること」を考えたくて手紙をお送りします はあちゅう

花田菜々子様

はじめまして。

『シングルファーザーの年下彼氏の子ども2人と格闘しまくって考えた「家族とは何なのか問題」のこと』、拝読いたしました。一冊目の『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』もこの機会に再読しましたが、花田さんの洞察に富んだ視点や語り口はそのままに、人との出会いを広げることから深めることへ移行していく過程を、とても楽しく読みました。

私は、2018年に夫と結婚(事実婚)して、2019年の秋に第一子になる息子を出産しました。今、産後半年になります。夫は私と事実婚する前に一度結婚しており、元奥さんとの間に双子の娘がいます。2人とも離れた土地で暮らしているのですが、夫とはラインなどで頻繁にやりとりしており、私が妊娠中の2019年夏には、双子のうちの1人が我が家にしばらくホームステイしにきました。

 

 

そのことをある日SNSに投稿したところ、フォロワーさんからコメントがつきました。その内容を要約すると「妊活詐欺の炎上商法であなたに幻滅していたけれど、こんなふうに元夫の子供を受け入れるのは偉い。見直した」ということでした。妊活詐欺、炎上商法という言葉から不快感を覚えましたが、それよりも人の家族のあり方に対して「偉い、見直した」と、勝手に評価を下していることに違和感を覚えました。感じ方は人それぞれだと思うので、私の生き方にどんな感想を持つのもその人の自由だと思います。ただ、その人の価値観で、私の行動、人生、家族のあり方に評価を下し、「幻滅した/見直した」と本当の私には会ったこともないのに安易に評価をひっくり返し、わざわざ伝えてきて心を乱す人に、今後私の人生の評価を書かれたくないと感じてブロックしました。

誤解のないよう補足しますが、「偉い」と言われたこと自体が嫌だったわけではありません。その人が、私の妊活を間近で見ていたわけでもないのに、妊活詐欺の炎上商法と決めつけていることと、そういった、私が見ても嫌な気持ちになるだけの情報を伝えてくること、そしてちょっとした情報ですぐに人を好き・嫌いで分けてしまって、それもまた本人に伝えてくることに拒否感を感じました。

花田さんの本の中に、シングルファーザーの彼氏のトンさんの「いろんな人からかわいそうだと言われたり、偉いと言われたりするんですが、でも普通、というか。だって、その立場になったら、そうする以外にないでしょ?」という言葉が出てきます。この箇所を読んだ時に、あの時ブロックした人のことが頭を過りました。自分も含めて、人は自分が思う「普通ではない」ものに対して「偉い」とか「すごい」とか、評価めいた言葉を安易にかけがちです。もちろん、自分には出来ないです、とか大変ですね、と尊敬の意味が込められていることがほとんどだと思いますし、言葉は常に相手との関係性とセットなので一概には言えませんが、「普通ではないこと」は周囲の人を批評家に変えてしまうんだな、と気づきました。

私は、初めて会ったフォロワーさんに、出会い頭に「思ったよりブスじゃないですね」と言われたことがあります。私が書籍でネットで「ブス」と叩かれまくり、ついにはグーグル画像検索「ブス」1位になったエピソードをネタとして披露していることや容姿への中傷を気にする発言をSNSでしていたことから、相手はもしかしたら私を慰めるつもりで言ってくれたのかも知れません。けれど、全く容姿に触れる必要の無い場面で、「相手が私の容姿をどう思っているか知りたくない、知る必要もない」のに、いきなり容姿に評価を下され、褒めるならまだしも(褒めればいいわけでもないのですが)「ブスじゃない」と上から目線のことを言われ、これから届けるお弁当を派手に落としたウーバーイーツの配達員みたいな気持ちになりました……。

新刊の『子供がずっと欲しかった』では、夫がAV男優であることを世間に丁寧に説明しないと受け入れてもらえないような居心地の悪さに触れていますが、「家族のあり方」も世間一般の「普通」から外れると、自動的に評価される側となり、受け入れてもらうために説明を尽くさなくてはいけない感覚を覚えます。そして、説明する側になると途端に人から「正解を持っている人」や「その立場の代表人物」に見られがちな気がします。

花田さんは本の中で、ミナトちゃんとマルちゃんへの接し方についてたくさんの疑問を持っていて、それらに答えを出さずに、「どう対応していいかわからない」と書かれていて、安心しました。

私には性風俗に通う夫をもつ奥さんやホストと付き合う女性からの相談がたくさんきます。「AV男優と結婚しているあなたなら、私を納得させてくれる答えを持っているはず」と思われているのだと思います。「連れ子とどう接していいかわからない」などの悩みも来ます。悩んだ時に、私の顔を思い浮かべてもらえることはありがたいのですが、同時に苦しくも感じます。私はAV男優と結婚する時の正解や、旦那の元奥さんの子供たちとの正しい付き合い方を知っているわけではないのです。全て手探りで、一つ一つ自分で考えながら、わからないことはわからないまま日々を過ごしています。

「私はこう考える」とは言えても、それらは私の状況と性格に合わせた対処法であって、ビジネス本が提示する「生産性を高める方法」のように、多くの人に提唱出来るものではありません。好きになった人がAV男優で、その人には結婚歴があったから、花田さんの彼氏のトンちゃんさんの「その立場になったら、そうする以外にないでしょ?」ではないですが、私は手探りで自分の正解を日々探っています。息子が産まれてからは「家族ってなんだろう?」ということをよく考えています。

花田さんの本の中の「みんなそれぞれ好きに生きようよ。家族全員が同じ気持ちで心を寄せ合って、いつも足並みが揃っているのなんて目指したくはない」という一文は心にしみました。これは、私の理想の家族像でもある気がします。

この往復書簡企画では、花田さんと「家族」や「誰かといっしょに生きるということ」について、正解を探らずに、いろいろお話できれば嬉しいです。
 

はあちゅう

*   *   *

花田菜々子さんからのお返事は、5月1日(金)に公開予定です。

関連書籍

はあちゅう『子供がずっと欲しかった 事実婚妻が体験した妊娠・出産のこと、全部。』

ブロガーの妻、AV男優の夫。事実婚のまま、家族を作るのだ――。 「人生全部コンテンツ」を実践。その生きざまを赤裸々に綴る。

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子供がずっと欲しかった

4月16日発売『子供がずっと欲しかった 事実婚妻が体験した妊娠・出産のこと、全部。』を紹介

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はあちゅう ブロガー・作家

ブロガー・作家。慶應義塾大学法学部卒。電通コピーライター、トレンダーズを経てフリーに。「ネット時代の新たな作家」をスローガンに、媒体を横断した発信を続ける。2018年7月にAV男優・しみけん氏との事実婚を発表。2019年9月に第一子を出産。『仮想人生』『「自分」を仕事にする生き方』『恋が生まれるご飯のために』(すべて幻冬舎)、『旦那観察日記』(スクウェア・エニックス)、『半径5メートルの野望』『通りすがりのあなた』(ともに講談社)など著書多数。
ツイッター・インスタグラム:@ha_chu

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